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金木犀の許嫁
第四十二話 プールその七

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「あの人はね」
「嫉妬されていたんですね」
「そうらしいのよ」
「あれだけ名声があっても」
「そんな人もいるけれどね」
 それこそ常人なぞ及びもつかない、不眠不休で漫画を描いていてもだ。事実徹夜も普通の人生だったという。
「大抵の人はね」
「必死にしていますと」
「嫉妬なんてね」
「しないですね」
「学業も必死にしていたら」
 それならというのだ。
「やっぱりね」
「嫉妬なんてしないですね」
「悪いこともね」
「しないですね」
「いじめとかね」
 こうした悪事もというのだ。
「お勉強とか部活に本気で打ち込んで」
「必死で努力していたら」
「もうね」
「悪いことしないですね」
「そんなこと考える暇もね」
「ないですね」
「大変だって思うのは」
 それはというのだ。
「まだ余裕がある場合だってね」
「言われてます?」
「そう思えるだけのね」
 大変だと、というのだ。
「余裕があって」
「思うものですね」
「そう、今お話してる通りね」
「だから何かに必死に打ち込んでいると」
「嫉妬しないし」
 そうした感情を抱く余裕すらなくというのだ。
「いじめとかもね」
「しないですか」
「朝から晩まで野球の練習してる人がいじめするか」
「もう頭の中野球だけですね」
「王さんなんてね」
 王貞治、ホームランの世界記録を持つこの人物はというのだ。まさに言わずと知れた偉人の一人である。
「誰かに嫉妬したりいじめするか」
「想像出来ないですね」
「遥か高みにおられる人でしょ」
「そうですね、あの人は」
「長嶋さんを意識して」
 共に巨人の主軸を形成していた長嶋茂雄とをいうのだ。
「いつもあの人の倍バット素振りしていてね」
「長嶋さんが振ったのと」
「長嶋さんがその日振った数を聞いて」
「その倍をですか」
「幾ら遊んでもね」
 そうして帰ってきてもだ。
「それだけ振って休んでおられたのよ」
「長嶋さんの倍努力されていたんですね」
「そしてね」 
 そうしていってというのだ。
「あれだけの人になったのよ」
「世界のホームラン王ですね」
「一本足打法生み出す時も凄かったし」
 血の滲む様な努力を経てである、荒川博コーチと共にそうした努力を経て生み出した打法であったのだ。
「ああしてね」
「凄い努力をしていきますと」
「嫉妬とかしないわよ」
「そうですか」
「もう我が道を行く」
「そうなりますね」
「そうなの。だからね」
 そうであるからだというのだ。
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