暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission5 ムネモシュネ
(7) 次元の裂けた丘(分史)~????
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
リーゼだった。満身創痍の自分たちと、浮遊する大精霊を見比べ、二人揃って蒼然となる。

「来ちゃだめぇ!」

 エルが叫ぶと同時に、クロノスが闇色の光線を放った。ルドガーがエルとルルを抱き込み、ほかの者は身を竦めた。

(ここまでか!)

 ユティはポケットから夜光蝶の懐中時計を取り出――

「ユリウスさん!?」
「――え」

 クロノスの光線を防いでいる男がいた。攻撃の余波でなびく白いコート。骸殻の影響で変化した紺青の双剣。

(間に合った……)

 メールでここに来るとユリウスにはあらかじめ知らせていた。アスコルドとは距離とダイヤの壁があったが、近場ならユリウスは必ず来ると踏んでいた。ルドガーを一刻も早くクランスピアから引き剥がしたいと切望しているのはユリウス自身なのだから。

「ルドガー! 時計を――お前の!」

 ルドガーは慌てたようにポケットから真鍮の時計を出し、ユリウスに差し出した。
 ユリウスは金時計を持つルドガーの腕を掴むと、骸殻の段階をクオーターから一気にスリークオーターに上げた。
 双剣が闇色の大球を遠くへと弾いた。すると、球は弾けて暗い穴を開けた。

「ルドガー!」
「え? …うわ!」

 ユリウスは骸殻も解かないままルドガーの手を引いて、『穴』まで走っていって飛び込んだ。

「逃げるが勝ちだぜ!」

 最も判断が速かったのはアルヴィンだった。アルヴィンはエルを左腕に抱え、右手でユティの手を掴んで走り出した。続く、ローエンとエリーゼ。

「ルルも!」
「「分かってる!」」

 ジュードとレイアのぴったり息の合った返事を最後に、ユティは『穴』に飛び込まされた。
 脳をサイダーに入れたような鮮烈な不快感。ユティはアルヴィンの手を離すまいとしがみつく。覚えているのはそこまでだった。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ