黒き森の魔狼
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しい色の月は嫌いだ。
月はやはり黄色の月がいい、滝はそう思っている。幼い頃からその色の月を見るのが好きだった。とりわけ日本で見た月は美しかった。何時終わると知れぬ死闘の日々の中ふと空を見上げると月がある。その淡い光を浴びると心まで癒されたように感じた。月は彼にとって欠かせぬ心の慰めの一つであったのだ。
「まあ贅沢言っての仕方無いか。見られるだけでもいい」
もう言って森の中を進んでいった。人の気配は無い。獣の気配も感じられない。リスや野兎といった小動物達がカサコソ動く音がするだけである。そして遠くから狼の遠吠えが聞こえてくる。
「・・・・・・」
狼、かと思った。だがその考えをすぐに打ち消した。何故か。何故ならばその遠吠えは古城の方から聞こえてきたからだ。
滝はその遠吠えから確信した。あの古城には絶対に何かある、と。足の歩みを速めた。
古城の前に来た。かってはこの辺りの領主の城の一つだったのだろう。苔むしてはいるが威風堂々とした造りである。
扉を開けた。樫の木で造られた頑丈な扉である。扉を開けたままにして中に入った。
窓から入ってくる月明かりを頼りに中を調べる。城の中は機能性を重視した造りの為思った程広くはない。その中を一部屋ずつ丹念に調べていく。
城主の間に入った。やけに背もたれが高いベッドの他は何も無い。当時のベッドは敵に素早く対処する事が出来ることを重要視し、完全に熟睡せず、また素早く起きられるようにと座って眠る為こうした造りになったという。
ベッドを調べてみた。昼に調べてみたが何も無かった。そして今度も何も無いようだ。滝がやれやれ、と溜息をついたその時後ろから足音がした。
「誰だ!」
後ろを振り向きざまに胸の拳銃を抜く。44マグナム。像ですら一撃で倒すと言われる銃だ。
「滝、さん・・・・・・!?」
声は女のものだった。しかもその声は聞き覚えのある声だった。
「えっ、ルリ子さん!?」
月明かりを背にしたその女性を滝は知っていた。彼女の名は緑川ルリ子。本郷猛を仮面ライダーに改造した緑川博士の一人娘でありライダーの協力者であった女性だ。
歳は二十代後半といったところか。黒い絹の様な長い髪が整った細い女性的な顔によく似合う。スラリとした身体を黒い上着とズボン、そして同じ色のブーツで包んでいる。
彼女は日本において本郷猛と行動を共にし、彼が欧州に渡るとその後を追い共にショッカーヨーロッパ支部と戦った。本郷が日本に戻ると一時行動を別にしていたがオーストラリアで合流し以後そのパートナーとして活動している。滝や立花藤兵衛等と共にその名を知られた女性であり今も尚本郷と共に活動を続けている。その事は滝の耳にも入っていた。何時か会いたいと思っていたが機会を得られずそのままとなっていたのだ。
「何
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