第一章
[2]次話
昔の贅沢弁当
弁当屋で幕の内弁当を買って社内で食べてだ、若い市役所の職員本多義男黒髪を短くし溌溂とした顔で引き締まった身体の長身の彼は課長の中西時康四角い顔で色白で眼鏡の奥に丸い優しい目がある黒髪をセットした中肉中背の彼に言われた。
「美味かったかい?」
「滅茶苦茶美味しかったです」
本多は中西に笑顔で応えた。
「本当に」
「それは何よりだね」
「午後も頑張ります」
「宜しくね、しかし本多君はお弁当好きだね」
「大好きでして」
笑顔のままで応えた。
「あそこのお弁当屋さんでもです」
「よく買ってるね」
「そうしています」
「そうだね」
「幕ノ内だけでなくて」
「他のものも頼むね」
「それで食べています」
こう言うのだった。
「毎日」
「結婚したらそれが愛妻弁当になるよ」
笑顔でだ、中西は本多に言った。
「僕みたいにね」
「それはいいですね」
「だからやっぱりね」
「結婚はすることですね」
「色々と充実するしね」
「子供も出来るとですね」
「そうもなるからね」
だからだというのだ。
「やっぱりだよ」
「結婚はすることですね」
「そうしたらいいよ」
「そうなんですね」
「そう、ただね」
中西はここで少し苦笑いになった、それでこうも言った。
「僕の奥さんは昔から悪戯好きでね」
「そうなんですか」
「お弁当も時々ね」
「悪戯がありますか」
「お握りの中に変な具を入れたりはしないけれど」
それでもというのだ。
「昔のご馳走弁当とか作ることあるんだよ」
「昔っていいますと」
本多はそれならと応えた。
「日の丸弁当ですか?」
「ああ、知ってるね」
「乃木大将のお弁当ですね」
「あの人はお家じゃ稗ご飯だったからね」
「稗を混ぜた」
「あの食事でね」
そうであってというのだ。
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