第一章
[2]次話
河豚は安い
店で河豚を食べてだ、サラリーマンの村田謙吾黒いショートヘアに細面で小さな細い目ので痩せた一七〇位の背の彼は言った。
「美味いですが」
「高いな」
「ですよね」
一緒に食べている上司の榊原真一に答えた、榊原は大柄で痩せていて眼鏡をかけていて長方形の顔をしている。後ろに撫で付けた黒髪には白いものが混じっている。
「やっぱり」
「今度この店で接待するからな」
「事前の下見で来て」
「会社のお金で食べてるけれどな」
「そうじゃないと来られないですね」
「サラリーマンが普通にな」
榊原も難しい顔で述べた。
「行ける店じゃないな」
「そうですよね」
「河豚はよく獲れる方だが」
「毒ありますね」
「こっちじゃ鉄砲って言うな」
二人は大阪にいる、こちらの言葉である。
「それはな」
「あたると死ぬからですね」
「だからな」
その為にというのだ。
「時別な調理が必要でな」
「河豚を調理していいっていう免許を持っている」
「そうした人じゃないと調理出来ないからな」
だからだというのだ。
「どうしてもな」
「高くなりますね」
「仕方ないさ、あたりたくないからな誰も」
「死にますからね」
「そうだよ、ただな」
榊原はこうも言った。
「江戸時代は安かったんだ」
「あの頃はですか」
「江戸じゃ一応ご禁制だったしな」
「大坂でもですね」
「けれど実はな」
禁制でもというのだ。
「店じゃ出してたんだ」
「安い値段で」
「たまたまお客さんの前に出てる形にしてな」
そうしてというのだ。
「皆食ってたんだ」
「そうだったんですね」
「あたるのは自己責任でな」
その考えでというのだ。
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