第四十二話 プールその六
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「コンプレックスなんてね」
「抱かないですか」
「そのことだけ目に入って」
そうなってというのだ。
「特にね。それに誰かを妬んだりとかもね」
「嫉妬もですね」
「しなくなるから」
「嫉妬は嫌ですよね」
真昼は困った様な顔になって述べた。
「私もクラスメイトの娘が絵が上手だったりして」
「それでなのね」
「羨ましいと思って」
それでというのだ。
「妬んだりです」
「したのね」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「後で凄く嫌な気持ちになりました」
「そうよね、妬むってね」
嫉妬、この感情はというのだ。
「七つの大罪にもあるしね」
「キリスト教のですね」
「憤怒、怠惰、好色、傲慢、大食、強欲とあって」
そうしてというのだ。
「嫉妬もね」
「その中にありますね」
「それだけね」
「悪い感情ですね」
「だからね」
そうであるからだというのだ。
「出来るだけね」
「持たないことですね」
「それが一番いいわ」
こう言うのだった。
「だからね」
「嫉妬する前にですか」
「必死に努力することよ」
「そうすれば努力だけに気が向いて」
「嫉妬する余裕なんてね」
それこそというのだ。
「なくなるわよ」
「そうですか」
「ええ、ただね」
ここで真昼は白華に不思議な顔になって話した。
「手塚治虫さんあれだけ凄くて活躍していて」
「嫉妬されてました?」
「他の漫画家さんが人気が出るとね」
そうなればというのだ。
「とんでもなくね」
「そうだったのですか」
「もうずっとお仕事していて」
漫画だけでなくアニメにも携わり小説も書きラフ絵も暇があれば描いていた、恐ろしいまでの激務家であった。
「それこそお亡くなりになるまで」
「お仕事していましたか」
「そうだったけれどね」
それでもというのだ。
「あの人嫉妬深かったらしくて」
「人気のある漫画家さんにですか」
「嫉妬して」
そうしてというのだ。
「もっと凄い、面白い作品描こうってね」
「されていましたか」
「毎日休む間もなく描いていて」
そうであってというのだ。
「それでも嫉妬する余裕があったのか」
「普通ないんじゃないですか?」
「私もそう思うわ」
白華に真顔で答えた。
「そうじゃないかなってね」
「そうですよね」
「けれどね」
それがというのだ。
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