第3部
サマンオサ
新しい国
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った……!」
彼の素振りを見て無理して言っていないことがわかり、ほっとする。
「それにしても、こんなに早く来てくれるなんて思わなかったよ。もしかしてもうこの国を出るの?」
「ううん。でも祠の牢獄の場所がわかったらすぐ行くと思う。だからその前に一度、ルークに会いたくてここに来たの」
「そっか……」
「……?」
何か思いつめたような顔をしているルークに、私は首を傾げる。
「ルーク。お前、ミオに何か話したいことがあるんじゃないのか?」
「え?」
「なんならオレは席を外すけど?」
なぜかナギがその場から離れようとしているので、私は彼を引き留めようとしたのだが。
「いや、出来ればナギにも聞いてほしい」
それより先にルークが止める。いつになく深刻な表情のルークに、私とナギは思わず目を見合わせた。
「ええと、私はお邪魔かしら?」
「母さんもここにいて。今から大事な話をするから」
気まずそうにリビングから離れようとするコゼットさんを、ルークはぴしゃりと言い放ち呼び止める。そして彼は空いているソファーに腰を下ろし、決意したかのように話し始めた。
「単刀直入に言うよ。二人とも、僕を君たちの冒険に連れていって欲しい」
『へっ!?』
思いがけない言葉に、私とナギの目が点になる。
「るっ、ルーク!? あなた一体どういうつもり……」
「もう職場に退職届は出してきた」
「えっ!?」
突然の退職に、コゼットさんも声を上げて驚く。仕事が休みなのに職場に行ったのは、このためだったのだろうか。
「えっと、ちょっと待ってルーク? なんでいきなり……」
「僕は今まで、自分の意志で運命を変えようとしなかった」
混乱する私にかまわず、ルークは話を続ける。
「環境に流されるまま、勇者サイモンの息子という自分の運命を呪い、世の中を恨みながら生きてきた。けど、それじゃあダメなんだってことに気づいたんだ」
するとルークは、ひた、と私をじっと見据える。
「それに気づかせてくれたのは、ミオなんだよ」
「え?」
「幼馴染の女の子だった君が、仲間とともにあの魔物を倒し、この国を救った。君の勇気が、僕の生きる道を照らしてくれたんだ。だから今度は、僕が君の道を照らしたい。君が僕にそうしてくれたように」
「ルーク……」
そのまっすぐな瞳には、一切の迷いが感じられないように見えた。
「母さん。しばらく一人にさせてしまうことになるけど、ごめん」
「大丈夫よ。お城から生活援助も受けられるようになったし、お父さんの名誉も回復したわ。私も……一人で生きていけるように頑張らないとね」
すまなそうに謝るルークだったが、コゼットさんはどこか吹っ切れたように笑顔を返した。
「で、でもルーク、私たちの旅は……」
「いいじゃねえか、ミオ」
言い淀む
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