第二章
[8]前話
「値上げするしかないな」
「そうだよな」
「お客さんには悪いけれどね」
息子も妻も父の言葉に頷いた。
「そうするしかないわね」
「どうしてもこのままだとやっていけないしな」
「そうしよう、お客さんには悪いが」
こう話してだった。
店は商品の弁当を値上げすることにした、そうしたが売り上げは変わらなかった。それで大悟は常連の客に店で尋ねた。
「値上げしたけれどいいですか」
「いや、今何処も値上げしていますから」
常連の初老のサラリーマン昔から馴染みにしている彼はそれでと答えた。
「そんなこと言ってもはじまらないです」
「そうですか」
「ですから」
それでというのだ。
「気にしても仕方ないです」
「何処も高いので」
「何もかもが」
「それはそうですが」
「このお店だけなら怒ります」
それならというのだ。
「ですが何処でも全部高くなっていますから」
「仕方ないですか」
「文句を言うなら戦争です」
そしてそれを行った国に対してというのだ。
「ですから気にしていませんし気にしてもです」
「仕方ないですか」
「それよりも味はそのままですから」
サラリーマンは笑顔で話した。
「接客もですし。このままでいて下さい」
「そうだといいですが」
大悟はこの時は常連客の好意の言葉だと思った、だが。
後でだ、今の世の中をよく見るとだった。
「何処も値上げして苦労してるしな」
「ああ、わかってたけれどな」
「つくづく苦しい状況ね」
「だからだな、うちだけじゃない」
このこともわかっていたが再認識したのだ。
「今はな」
「そうだな、その中でやっていくしかないからな」
「皆で」
「仕方ないな」
「安く抑えるにも限界があるし」
「うちの店が値上げしても」
「皆そうするしかないってわかってるのね」
「そうだな、今はそうした時だな」
大悟は心から思った、そして一家で弁当屋をしていった。何もかもが高くなっているその状況に呻吟しながら。誰もがそうなっている中で弁当を売っていくのだった。
コスト削減は難しい 完
2024・11・17
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