第一章
[2]次話
コスト削減は難しい
神戸市長田区八条町の商店街は昨今の商店街とは違いシャッターは見られない、どの店も賑わっている。
それは弁当屋の美晴屋も一緒だが店長の美晴大悟は今大いに悩んでいた、還暦になったばかりの面長で皺のある顔の小さな目の中背で痩せた白髪の男だ。
「最近何でも高いな」
「ああ、戦争の影響でな」
息子で大学を卒業してすぐに店の仕事に本格的に入った大作が応えた、父親そっくりの顔立ちで黒髪である。
「そうなってるな」
「困ってるのよね」
母の麗華も言って来た、穏やかな整った顔立ちで黒髪をボブにしている。五十代だがまだ姿勢もスタイルも見事だ。
「皆ね」
「うちもな、このままだとな」
大悟は家の中で苦い顔で話した。
「うちも値上げするしかないか」
「そうしたら売り上げ落ちるしな」
大作はすぐにこのことを指摘した。
「お客さんも困るしな」
「ああ、弁当は安く美味くな」
「それで早くだしな」
「味は維持出来てもな」
それでもというのだ。
「問題はな」
「値段だよな」
「どの食材も調味料も値段が上がっていて」
麗華がまた言った。
「電気代水道代もね」
「何でも上がってるからな」
「もううちもね」
「生活あるしな」
大悟はそれでと言った。
「色々工夫して食材やら調達してもな」
「もう限界よね」
「ああ、どうしようか」
「新しい仕入れ先探すとか」
「それもこれまでの付き合いもあるしな」
「難しいわね」
「八方塞がりだな」
大作は苦い顔で言った。
「もうな」
「そう言うしかないか」
「そうよね」
一家三人で家で話した、一階が店である。こうした話をして結論は彼等にとって苦渋のものだった。
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