激闘編
第百話 激戦の予感
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宇宙暦796年6月15日10:00
バーラト星系、ハイネセン、ハイネセンポリス郊外、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、統合作戦本部ビル、宇宙艦隊司令長官公室、
ヤマト・ウィンチェスター
大画面のモニターには生中継で捕虜返還調印式の様子が映し出されている。生中継といっても距離が距離だけに多少のタイムラグはあるけど、そこまで気にする程でもない。
「いよいよじゃな」
そう言うとビュコック長官はソファに座り直した。捕虜交換自体が無事終了した事は、既に我々にも伝えられている。これから調印式の締めくくりとして互いに調印書を交換して、式典は終了という訳だ……画面中央には向かって右に帝国のミュッケンベルガー、左にトリューニヒトが映っている。おそらく調印書だろう、お互いがペンを走らせている。サインが終わったら、互いに調印書を交換して式は終わりだ。式が終わったらマスコミによる質疑応答が始まる。まあ、こういった公式の場では、あらかじめ質問内容と回答は決められているものだ。そうじゃないとお互い何を言い出すか分からないし、それが新たな火種になりかねない。同盟と帝国は戦争中なのだから、尚更だ。
『歴史的な瞬間が訪れました、銀河帝国軍と叛乱軍軍部による捕虜交換が今、成就いたしました!』
一斉にカメラのフラッシュがたかれる。確かに歴史的な瞬間だろう、互いの軍部のみの同意とはいえ、一種の合意が成立したのだから…。
『フェザーン中央放送局のドロテア・カルテンブルナーと申します。ミュッケンベルガー元帥閣下、トリューニヒト氏お二人にお聞きします、この捕虜交換を機に両陣営が和平に向かう…という事は考えられるのでしょうか』
先にマイクを手にしたのはミュッケンベルガーだ。
『あくまでも両陣営に囚われた捕虜の返還に合意しただけであり、この事が帝国の戦争遂行について何ら影響を及ぼすものではない事を明言する』
続いてトリューニヒトがマイクを取る…プロレスのマイクパフォーマンスみたいだな…。
『今ミュッケンベルガー元帥が仰った様に、今回の捕虜交換式は両陣営の戦争遂行について…現時点では何も影響を及ぼすものではありません』
現時点…?トリューニヒトの奴、思わせぶりに話しやがる…。
『トリューニヒトさん、現時点ではと仰いましたが、この調印式が将来、または近い将来に何か影響を及ぼすとお考えですか』
『近い将来…未来の事は私には分かりません』
トリューニヒトはそこで言葉を切ると、せっつこうとするインタビュアーを力強く制止して立ち上がった…いちいち芝居がかってるよなあコイツは…。
『我々自由惑星同盟は…いや、この場では敢えて叛乱軍と名乗りましょう、我々叛乱軍の国是は専制政治の打破であります』
会場がざわついている…こりゃあらかじめ用意したスピーチじゃなさそうだ。ミュッケンベルガー
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