激闘編
第百話 激戦の予感
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いますと」
「ヤンが評価されていない事が悔しいのさ。ウィンチェスター副司令長官が居るからな。確かに副司令長官はすごい。だけどな、ヤンだってすごい奴なんだ。だけどヤンは自らを誇示しようとはしない。副司令長官に負けない才能の持ち主なのに。それが俺は悔しいんだよ」
ラップ参謀長はベレー帽を握りしめて沈鬱な顔をした…意外だった。参謀長だって過去には副司令長官の下で任務に就いていたのだ。同期の、親友の才能を認めているからこその憤りなのだろう…。
「参謀長はどうなのです?」
「…え?俺かい?」
「はい。小官ごときが申しあげるのも僭越ですが、参謀長も優秀なお方だと思っているのですが」
ラップ参謀長は私の発言の意図に気付いたのだろう、大声で笑い声をあげると、ベレー帽を被り直した。
「俺は司令官の器ではないと思うね。他人の評価は気になるし、参謀長として虚勢を張っているのが精々だよ。それに…」
「それに…?」
「もし艦隊司令官にでもなってみろ、ヤンや副司令長官と比較されてヘコむのが関の山さ……さあ、作戦室に行こうか。つまみ食いした事、ヤンには黙っててくれよ?」
参謀長は私の肩をポンと叩いて先に行ってしまった…副司令長官のせいでヤン閣下は正しく評価されていない…閣下を支える私にとって、この言葉の意味は重い。正しく評価されないが故に不当な扱いを受ける可能性があるからだ。正当な評価を受けるにはまず実績をあげねばならないのだけど、閣下はその点についてどうお考えなのかしら…。
作戦室に入ると、室内の空気は緊張に包まれていた。
「すみません、遅れました」
「ああ、気にしなくていいよ。朝食、ありがとう」
ありがとうという言葉とは裏腹に、閣下は朝食に手をつけようとはしなかった。スクリーンの概略図を見ると、どうやらボーデンの状況が映し出されている様だ、参謀長が説明してくれた。
「どうやら帝国軍はやる気らしい。後退する第十一艦隊を追撃しようとしている。おまけにその後方には増援と思われる艦隊も現れた…国防委員長のスピーチが効いたのかな」
概略図には第十一艦隊に向かう帝国艦隊のはるか後方にもう一つ、敵艦隊を示すシンボルが映し出されていた。
「ヤンは自分の艦隊で向かいたい様だが、そうするとフォルゲンの状況が見えにくくなるという事で、第七艦隊、第十二艦隊とが今出撃準備を整えているところだ。他の艦隊も順次出撃準備に入る」
概略図にはボーデンに向かうのが第十二艦隊、フォルゲン方面に向かうのは第七艦隊である事が表示されている。ボーデンに敵が現れたのだからフォルゲンにも…至極順当な戦力配置だ。また昨年の様な状況になるのかしら。いや、昨年より状況は悪い、何しろ帝国軍は辺境配置の五個艦隊に加えて十万隻に及ぶ増援が存在する。再出兵の発表に対する反応として敵ながら最大級のもの
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