激闘編
第百話 乖離
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ウにも十万隻の帝国艦隊がたむろしているって話じゃないか。捕虜交換は済んだが…それはそれ、これはこれ…って事なんだろうな、あちらさんも」
十万隻、途方もない数だ。帝国軍は元から辺境防衛に五個艦隊を進出させている。更にシャンタウに七個から八個艦隊規模の増援…考えただけで頭が痛くなる。アムリッッア方面に展開する各艦隊の統率を任されてはいるものの、一斉に寄せて来られたら対処のしようがないな…。
「ですが、敵は何故全軍でヴィーレンシュタインに集結しないのでしょうか。全軍で集結した方が我々に対して圧倒的に有利だと思いますが」
ムライ中佐の言う事はもっともだ。
「命令系統が違うのでしょうか」
パトリチェフ少佐が自分の言葉を信じていないかの様に呟いた。
「そんな訳はないだろう。位置関係から考えても、シャンタウの帝国艦隊は増援、後詰だ。我々同盟は再出兵を発表している、それに呼応した動きと見ていいだろう。であれば命令系統は一本化されていると見るのが普通だ」
「…仰る通りですな」
ムライ中佐に反論されて、これが俺の仕事だと言わんばかりに深く頷くパトリチェフの姿には苦笑せざるを得ない…中佐の言う事は至極常識的だが、二つの宙域の帝国艦隊の命令系統が同じなら、その片方…シャンタウの艦隊はミュッケンベルガーの率いる十個艦隊のうちの幾つかという事になるが…ミュッケンベルガーは捕虜交換式を終えたばかりで、どう考えてもフェザーンを出たばかりの筈だ。とすれば、シャンタウの十万隻…七個から八個艦隊という大兵力の統率を部下に任せている事になる。これまでの戦い方を見ても、ミュッケンベルガーは陣頭に立つ男だ。奴が麾下の艦隊の指揮を他人に任せる、そんな事があるのだろうか。しかも後詰という重要な役割を、だ…。
「ビロライネン中将、現在の哨戒状況はどうなっていますか」
ビロライネン中将は、私が来る前まで暫定的にアムリッツア方面軍の指揮を執っていた方だ。退官を控えており、本人もまさか最前線で指揮官として勤務するとは思ってなかったという。そのビロライネン中将が端末を操作しようとした時、警報が鳴り響いた。居心地の悪くなるような警報音とは裏腹に、オペレータが落ち着いた声で報告を上げた。
「ボーデン宙域を哨戒中の第十一艦隊より通報……我、所属不明の帝国艦隊ト遭遇セリ…ボーデン宙域中心部、敵ノ規模凡ソ一二千万隻、彼我ノ距離、約一千光秒。我、後退中」
「了解した…フォルゲンでも同じ様に第八艦隊が哨戒を行っております。どうなさいますか、司令官」
ビロライネン中将は私に呼び掛ける時はいつも司令官、という部分を強く発言する。彼の本来任務はこのカイタル基地の管理維持にあるから、重責から開放されたのがよほど嬉しいのだろう。だが、そうあからさまに態度に出されると、此方としてはあまり気持ちのい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ