激闘編
第百話 激戦の予感
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
も少し不機嫌そうな顔をしている…。
『ですが、それは帝国そのものを打倒するという意味ではありません。あくまでも私見として聞いていただきたいのですが、私はそう考えています……現在と、近い将来とでは、状況はそれほど変わらないでしょう。ですが未来の為政者は思い出すかも知れません、両陣営が手を携えた今日という日を』
会場のざわめきは一層大きくなった。ミュッケンベルガーが立ち上がる…表情は渋いままだ。トリューニヒトがミュッケンベルガーに向き直って右手を差し出した。少しの間をおいてミュッケンベルガーもそれに応える…式の体裁は整える、という事だろう、お互い握手を終えると式場から出て行った……。
「流石は我等が国防委員長だの、あの様なハッタリをかますとは…肝は座っとる様じゃ」
長官もトリューニヒトの答えた内容が事前に用意されたものではない、と思った様だった。
「わざわざ私見です、って言いましたからね。何を考えているのか…」
トリューニヒトの喋った内容は微妙な内容だった。専制政治の打倒と帝国の打倒は別だ、と言ったのだ。この放送が帝国でも流れているとしたら、帝国に住む人々は奴の発言をどう捉えるのだろう。放送を観た人々が属する身分階級で奴の発言の受け取り方が変わってくる筈だ。同じ事は同盟にも言える。トリューニヒトは今まで帝国打倒を唱えて来た。にもかかわらず帝国打倒と専制政治打倒は同意義ではないという考えを明らかにしたのだから、同盟市民の中でも様々な反応が生まれるだろう。
「まあ、どう評価するかは別として、改めて帝国に喧嘩を売った事は間違いありませんね」
「そうじゃな。心強いというか、先行き不安というか…失言じゃったかの、これは」
「いち有権者の言葉として聞き流しておきます」
俺がそう返すと、長官は大きな声で笑った。トリューニヒトの言葉の真意は分からないけど、もしかしたら会見自体を打ち切る為にあんな事を言ったのかも知れない。だから発言後すぐに握手を求めた…
「予定では、式終了後直ぐにフェザーンを出立するのだったな、委員長一行は」
「はい。すでに小官以外の各艦隊は出撃しております。遠征部隊の行動目的は、表面上は訓練と帰還兵の出迎えとなっておりますので、まずジャムジードにてフェザーンより帰投した第十三艦隊及び帰還兵輸送船団と会合します。それ以後の行動は通信管制を敷き秘匿行動に移ります。ジャムジード到着以後の遠征部隊の行動に関しては、欺瞞情報のみとなります」
「遠征部隊との通信が回復するのは、彼等のハーン到着後じゃったな」
「はい。補給の為にイゼルローン要塞を経由する以外は、遠征部隊の行動が表に出る事はありません。要塞にて補給を受ける事も欺瞞計画の中に入っておりますので、これについても問題はありません」
「ふむ…貴官はいつ出発じゃったかな」
「本日一
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ