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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第112話 辺塞到着
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室を立ち去ったあとで、少しだけ未来に希望が持てる要素が見つかって安堵して席に座り直すと、それはそれは怖い顔をしたドールトンが正面に立って、俺に向けて冷たい視線を放っている。

「ドールトン中尉」
「私は 隊司令の 女などでは ありませんが?」

 文節ごとに区切って応えるドールトンの怒りは半端ないが、俺としては後日淹れられる珈琲以外に怖いものはないので、座ったまま天井に向かって一つ大きく溜息をついた後、紙コップを片付ける手を止めさせ、指でテーブルを挟んだ向かいの席に座るよう指図する。
 とりあえずは何も言わずその指図通りドールトンが席についたので、一度自分を落ち着かせるよう目を瞑って深呼吸する。彼女に話さなければならない話は多いが、まずはこれからだろう。

「中尉。大佐に対し貴官が『俺の女』のように匂わせたのは理由がある」
 どんな理由だよと、上官反抗罪に相当する表情でドールトンは睨んでくるが、八重歯を剥き出しにしてキレているアントニナや、無表情でトマホークを握っているブライトウェル嬢に比べれば、春の微風同然に温い。
「ああ言っておかなければ、この基地で貴官の安全は保てないからだ……副官の任務には基地司令や各隊司令間の連絡業務もあるだろう?」

 着任早々の今は、俺が顔合わせも兼ねて一緒に動いているが、忙しくなる今後はそうも言ってられない。
 
 だいたい憲兵は一体何をしているんだと言いたいくらいの治安の悪さだが、憲兵隊の指揮者は入院中の副司令なので、今は基地全体の秩序回復より、基地司令部の維持・防衛に主軸を置いているように見える。年齢より若く見える美人の女性士官が、もし単身で共用スペースを歩いているのならば、不埒な小鬼の格好の標的になりかねない。

 それくらいは流石にドールトンも分かっているようなので、唇以外整った顔の怒りは少しだけ軽減される。

「大佐は駐留する機動哨戒隊の先任だ。彼の口から哨戒隊全体に伝わることで、より早く貴官の安全は確保されるのはわかるだろう?」
「しかしそうだとしても、『隊司令の女』などという言い方はないと思います。セクハラだと思いませんか?」
「では『オブラック中佐の女』と言った方が良かったかな?」
「!! しかし、それは……」
「わかってくれて何よりだ……少しでも安全の確率を高めるのであれば、警戒する相手は基地要員だけにした方が良いだろう」

 本来であればナンバー三である参事官のオブラックが、副司令に代わって憲兵隊を指揮して基地内部の秩序回復に勤めなければならないはず。越権行為を恐れるならば、管区司令部に許可を取ればいい。この高級軍人としての積極性と責任感のなさが、『マジ』なのか『わざと』なのかわからないが、不作為であることは確かなのだ。

「俺は貴官にオブラック中佐と付き
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