第112話 辺塞到着
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しながら吐き捨てた。
「基地司令は耄碌爺。副司令は精神をやられたとかでルンビーニの軍病院に入院中。参事官はどうしようもない女たらし。補給廠の補佐官達は揃いも揃って渋チンだ。マトモなのはドック長ぐらいなもんよ」
俺の横に立つドールトンの、後ろに回した両手が強く握られていることなど知る由もない。もしかしたら次に出されるおかわりの珈琲には、雑巾のしぼり汁が含まれるのではないかと俺は気が気ではないが、二メートル近い身長とそれに見合った筋肉の鎧を纏う大佐なら、きっと胃袋もそれに見合っているだろうと信じるしかない。
「一〇年前。俺が一介の駆逐艦艦長としてきた時はこんなではなかった。六年前、第五二補給基地に配属された時も、ここはまだマトモだった。あの女たらしは居たが、まだ上官がマトモだったからな。三回目の辺境勤務で先任になってアイツの上官になっててよかったぜ。あれは下半身以外、本当に役に立たねぇ」
確かに大佐はこう言ってはなんだがモテるような顔つきではないが、そこまでオブラックを目の敵にする必要があるのか。口を開く度にドールトンのヘイトがどんどん溜まっていくのを横で感じつつ、俺は珈琲の残りを少しずつ傾けながら、ギシンジ大佐を見つめる。
第五四補給基地を係留地とする哨戒隊は総勢二八個。その最先任である大佐であれば、基地司令に対してもモノを言えるはずだ。一個哨戒隊には約四〇〇〇人が乗り組んでおり、だいたい半数の哨戒隊が任務に就いているとはいえ、少なくとも五万六〇〇〇人の乗組員が補給基地に駐留している。整備兵を含めて三万六〇〇〇人しかいない補給基地側により強く出られるにもかかわらず、こうやって部下の艦で愚痴をこぼすしかないのはどういうわけだろうか。
補給基地側の武器は、艦船整備と補給の二面だ。小規模な修繕以上はドックのある補給基地でしかできない。彼らの機嫌を損ねて整備に手を抜かれたら事だ。それにミサイルも撃てば当然なくなるものだから補充は必要で、唯一製造できる艦船用燃料以外の戦闘物資の大半はルンビーニからの輸送に頼っている。その補給物資の管理を任されている補佐官達の匙加減一つで、物資が得られないとなれば確かに問題だ。
「おいおい奴らの使い方は分かるようになる。ところでローレンソンから哨戒範囲と手順の話は聞いているか?」
「一応、一通りは」
他の四つの補給基地に所属する哨戒隊と順番交互に、割り振られた巡回ルートをほぼ四週間かけて一回りして二週間休む。この二週間の休みは半舷休息になるが、巡回ルートを三回こなした次の二週間は船をドック入りしての全舷休息となる。これら全て合わせて一八周間で一ローテとなり、二年一〇四週間のうちで五回ないし六回、繰り返すことになる。つまり任期中の出撃回数は計算上、一八回。
ただしそれはあく
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