第112話 辺塞到着
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を浮かべていて、士気は明らかに低い。
そうかと言えば司令部スペース内の床は機械清掃のおかげかまったく汚れていない。その上、明らかに私物と思われる品物が廊下に置かれている。そして何故か司令部スペースと他の区画の境界に、拳銃ではなく抜き身の小銃を持った衛兵が立っている。そんな異様な空間を歩くこと二分。ようやく俺は補給基地司令に会うことができた。
「この度、第一〇二四哨戒隊司令を拝命いたしました、ヴィクトール=ボロディン中佐です」
「よろしく。第五四補給基地司令のガネッシュ=ラジープ=レッディ准将だ」
身長は俺と同じくらいだが、胴回りの恰幅がいいインド系。定年のことを考えれば、年齢は限界ギリギリの六〇代だろうか。額に寄る皺の多さは爺様の比ではない。いかにも好々爺といった笑顔を浮かべているが、俺を見る瞳はこちらを値踏みするようでいて、その奥には猜疑心がちらついている。
そんな彼の年齢以上にしわがれた手を笑顔で握りつつ、周辺視野に入る部屋の内装を確認する。なんら変哲もない、ごくごく普通の司令官個室。なのになぜか違和感がぬぐえない。ピラート中佐の執務室のように『イロイロな』モノがあるわけでもないし、床も壁も天井も実に綺麗だ……むしろ綺麗すぎる。
「君の直接の上官は、ルンビーニ星域にいる管区司令官閣下ということになるだろうが、我々の間でも友好を育むことは決して悪いことではあるまい」
「閣下の仰る通りです。哨戒隊の任務達成は、給糧・給兵・整備いずれも補給基地の支えがあってこそです。是非ともこれからよろしくお付き合いいただければと」
「ははは。そうかね。船乗りの方からそう言ってくれると、心が洗われるようだ」
上機嫌で握手を上下させながら言うレッディ准将の言葉に、さらに俺の腹の中の不信感は増幅していく。
哨戒隊はレッディ准将の言う通り補給基地の隷下部隊ではなく、第三辺境星域管区司令部直属の部隊であって、基地を根拠地にしているのはあくまでも「間借」という形だ。哨戒隊のスケジュールに関して、補給基地側からの干渉は出来ない。
これは第三辺境星域管区内にある四つの補給基地と、一二〇近い哨戒隊との運用による。哨戒隊は決められた補給基地に係留地を持つが、あまりにも広大な哨戒範囲をカバーする為に、複数の補給基地で補給や整備を受けられるようにした方が何かと便利だからだ。
もし哨戒隊が補給基地に隷属する形となると、哨戒範囲を四つに区分けすることになり『縦割りの弊害』が生まれ、範囲を超えた追跡ということが出来なくなる。哨戒範囲の巡回をさらに数を減らした哨戒隊で巡視するよりは、全体を常に七〇近い哨戒隊で範囲をカバーした方が、移動時間分の遊兵が少なくなる。
故に哨戒隊と補給基地は宿屋と旅行者のような関係だ。「あちらこちら
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