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金木犀の許嫁
第四十話 昔の忍者その七

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「大正やが」
「今はなくてもいいですね」
「そやろ、ええにしてもな」
「今とは違う」
「そのことはな」
 どうしてもというのだ。
「あるわ」
「そうですか」
「それは言うわ」
「今も」
「ああ、今こうしたファッション着るなんてないからな」
 どうしてもというのだ。
「ほんまな」
「それで、ですね」
「大正のモンやともな」
 この時代生まれのというのだ。
「今も思うわ」
「そうですか」
「しかし形が変わってもな」
「今も残っている」
「そうしたもんもあって」
 それでというのだ。
「楽しめるのがな」
「いいんですね」
「このコーヒーかてな」
 自分達が今飲んでいるものもというのだ。
「昔と今やとな」
「違いますか」
「煎れ方が全く違ったんや」
「そうだったんですね」
「機械がちゃう、お水もな」
「それもですか」
「完全に水道やろ」
 こう言うのだった。
「どのお店も」
「はい、お水は」
「ミネラルウォーター使ってるお店もあるけどな」
「こだわるとですね」
「昔は井戸水やったさかいな」
「織田作さんの頃は」
「大阪は水道普及してる方やったが」
 それでもというのだ。
「まだまだな」
「井戸が多くて」
「そのお水でコーヒー作ることもな」
「ありましたか」
「それでキリマンジャロとかブルーマウンテンとかな」 
 今度は豆の話をした。
「そんな贅沢なことは」
「言えなかったですか」
「そやった、入れる機械もさっき言うた通りな」
「今とは違っていたので」
「ほんまな」
 同じコーヒーでもというのだ。
「ちゃうかったんや」
「そうだったんですね」
「コーヒーもな」
「昔と今ではですね」
「そやねん」
「そうでしたか」
「ほんまな」
 織田作はさらに話した。
「コーヒーでもそうで他にも色々とな」
「今と昔ではですね」
「違うわ」
「そうですか」
「けれど同じもんがな」
「残ってもいますね」
「そうでもあることがな」
「織田作さんは嬉しいですか」
「ああ、ただな」
 ここで織田はこうも言った。
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