第111話 第一〇二四哨戒隊 その2
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資金力と言えるだろう」
「もしそうだとしても、『大佐で卒業』ではダメなのです。シトレ大将閣下」
同盟が人口の絶対数において帝国を凌駕することは出来ない。その上で同盟を叛徒とみなす帝国の侵略に対抗しつつも辛うじて四八対四〇の国力比を維持できるのは、フェザーンの干渉があるにしろ生産性において優位に立っているからに他ならない。
その優位は優秀な生産基盤と中堅技術層によって現在まで支えられているが、度重なるイゼルローン攻略戦の失敗、アスターテ星域会戦での大敗北、そして帝国領侵攻という、あと残り僅か四年で二五〇〇万人の軍人を失うことで完全に崩壊する。
二年後、大佐で軍役を終えて評議会議員選(出馬できれば悪霊と同期となるが)に当選するとしても、残り二年で大侵攻を政治側から阻止することはほぼ不可能だ。少なくとも一〇歳年上で現在評議会二期目のコーネリア=ウィンザーを抑え込めることすら出来ない。怪物の威を借りたとしても、結果として与党派閥内抗争を巻き起こすだけで、大侵攻を阻止することは難しい。
であるならば、機動哨戒隊で功績を上げ早めに大佐に昇進、いずれかの正規艦隊(できれば第五艦隊の)巡航艦戦隊で功績を上げて准将。そこで国防委員会の上級軍事参事官に戻れれば、辛うじて大侵攻前に、サンフォード議長の秘書に持ち込まれる作戦計画を軍政側から握りつぶすことができる、かもしれない。
特に前線で功績を立てた『将官』というステータスは想像以上に大きい。フォークがサンフォード議長の秘書に大侵攻作戦計画を持ち込めたのも、二六歳の若さでありながら『准将』だったからだ。本人自身が艦長あるいは前線指揮官として武勲を上げたかは正直わからないが、ロボスの参謀として功績を上げてきたのは間違いない。勿論後ろに控えるロボスの影に、議長側が遠慮した可能性は十分あるが……
「ベタ金にならなければ、とても評議会議員選挙で当選できません。それに出馬するとなれば仰る通り偉大なるトリューニヒト氏の与党閥しか選択肢がない以上、大将閣下のご迷惑になるだけではないですか?」
「君は豺狼当路を許すような男ではないと、私は信じているがね」
「私にも私なりの信念というものがありますが、同時にどのような恩であれ、恩を仇で返すような人間と思われるのは心外です」
「トリューニヒト氏を教会に連れてゆるしの秘跡をさせられるのは、君ぐらいしかないだろうに」
「ご存知かとは思いますが、それは人間にのみ通用するお話しです」
「……んん。やはり君はキャゼルヌの薫陶篤い後輩のようだな。温和な表情で辛辣な台詞を吐く」
太い唇を小さく歪ませながら、小さく鼻で笑うシトレに、俺は表情を変えることなく腹の底で深く溜息をつくしかなかった。
残念なことに現実として原作通りに物事は進んでしまっ
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