第111話 第一〇二四哨戒隊 その2
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ないことだと思うがね」
「勿論です」
俺も隊司令ではあるが、同時に第一分隊の指揮官であり、さらに言えば旗艦である戦艦ディスターバンスの艦長でもある。第一分隊のふがいない結果は全て俺の責任だから、他の分隊からのキツイ指摘は甘んじて受けなければならない。共通の悩みがあるおかげで、ビューフォート副長との仲は極めて良好だ。
それでも猛訓練の結果、同時に編制された二〇の哨戒隊の中で、第一〇二四哨戒隊が最も精強な部隊になったことは間違いないことだろう。俺が本当に求めるレベルにはまだまだ達してはいないが、俺がヘマをしない限り、同数の敵と相対して一方的な敗北になることはまず考えられない。俺は上級幹部から一兵士に至るまで散々に恨まれているが、そんなことは彼らが命を失うことに比べれば大したことではない。
「あと必要なのは成功体験だけだと思います。それでみんな理解してくれるでしょう」
「いきなり万の艦隊に遭遇して、蒸発することもあるのにかね?」
「一隻でも逃げ切れれば勝ちです。それが哨戒隊の存在意義ですから」
「成算があるようだな」
「秘密です」
俺が豚ハラミのソテーを切り刻んで口に運ぶと、シトレも一度大きな両肩を竦めてから厚切りのステーキを処理にかかる。二口、三口と口に放り込みつつ、二人とも無言でワインを傾け続ける。
俺にとってシトレは三人目の父親といっていい。前世も入れれば四人目だ。シトレ自身、結婚はしているが子供はいない。部下であった父を指揮下で失った負い目もある。必要以上に俺のことを、シトレは事あるごとに贔屓してきた。そんな俺が機動哨戒隊を『志願した』ということが、気が気でないのかもしれない。
「今更というわけではないが、哨戒隊の任期が終了したら軍を辞めるつもりはないか?」
士官学校校長の頃から一〇年間、ずっと言われ続けたこと。自分でも前線指揮官というよりは、後方勤務の方が向いているのではないかと思わないでもない。だが俺がこの世界に転生してからの最低限の目標は、宇宙暦八〇一年七月二七日まで同盟を存続させることだ。その前でも可能なら機会を逃すことなく、金髪の孺子と赤毛のノッポを始末しなければならない。
「繰り返すようで申し訳ないのですが、二年後に小官が仮に軍を辞めて政治家に転身したところで、政府内部で力を発揮するどころか、地方議会議員にすらなれませんよ。まずもって地盤がありません」
「地盤は君が尊敬して止まないヨブ=トリューニヒト氏が用意してくれるとも」
そんなところはトリューニヒトを信用しているのかと、俺は呆れた目でシトレを見るが、シトレはいつになく真剣な表情を浮かべている。
「選挙資金は三三億ディナールを片手間のように用意できる『年配のお友達』に頼めばいい。たとえその一〇〇〇分の一でも、圧倒的な
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