第111話 第一〇二四哨戒隊 その2
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れることは百も承知の上で俺は準備している。伊達に査閲部とマーロヴィア軍管区司令部と第四四高速機動集団で鍛えられてきたわけではない。
「いいとも。ドールトン、照明を消してくれ」
俺の指図にドールトンが席を立って会議室の照明を消し、俺と艦長達の間に在る三次元投影機を起動させる。俺は鞄からやや大きめの画面端末を取り出し、投影機に接続して訓練プランを映し出した。
固定静止目標・移動目標への射撃訓練、航行補給訓練、隊列組換・陣形変更訓練等々。編制当初に予定している訓練宙域での規定訓練以外に、任地移動中の期間も目一杯利用する。項目だけで一〇〇を超えるその内容に、暗闇の中にある艦長達の顔は渋くなる。
「訓練は何事においても分隊単位で評価する。故に分隊各艦は互いを兄弟か家族と思って、一丸となって訓練に励んでほしい。そしていずれかの分隊が目標を完全達成するまで同じ訓練を続ける。平均が九〇点を超えなくても同様だ。出来るまで同じ訓練をひたすら繰り返す」
「それじゃあ訓練は、いつまで経っても終わりませんよ」
暗闇の中の不規則発言で、誰が言ったのかは分からない。だがそれは艦長達の偽らざる本音だろう。だからこそ俺は、より挑発的な口調で艦長達に応える。
「『死んだ方がマシ』だと言ったはずだ。出来なければ、生き残れない。敵は貴官らのレベルには合わせてはくれないのだから」
照明の明るさが戻った会議室の沈黙は重い。だがそれを気にすることはない。
「訓練に際し、俺から注意する点は二つ。一つは上官が目標を達成出来なかった部下に対し、暴力による私的制裁を加えることを禁止する。事実関係を確認の上、速やかに降等処分とする。上官が俺に報告を隠した場合も同様だ。もう一つは私的制裁でなく指導として手が出てしまった場合。本来その場合でも降等処分だが、部下に万全の治療を施した上で理由を説明し、必ず謝罪の上、上官に報告すること。処分については俺が判断する」
この辺りはヤンのイゼルローンにおける新兵指導と同じだ。暴力による支配は、暴力を生業とする軍ならではの悪癖だが、暴力による怨恨は平時の円滑な軍務の阻害という以上に、危機になった時の秩序崩壊の要因になりやすい。
「俺は基本的に私生活にとやかく言うつもりはない。二つだけ。指示された任務に際し、やむを得ない理由を除いて軍務を怠ることと、公的私的問わず禁止薬物を使用すること。これらを行った際は、即座に不名誉除隊とする。未報告も同様だ」
飲酒も公共ギャンブルも、身を滅ぼさない程度なら構わない。敵といつ遭遇するか分からない長期哨戒任務だ。息抜きは当然必要だろう。だがそれで軍務を怠れば、報いは命によって償われる。一人のミスが艦と哨戒隊と、最悪は辺境星域全体の問題になりかねない。
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