激闘編
第九十九話 捕虜交換式前夜
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。国防委員長閣下もお人が悪い、先に入ってお待ちになっていらっしゃるとは」
「いえいえ、この様な集まりは初めてですからな、つい急いでしまった様です。申し訳ない」
慇懃な挨拶をしながら、フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーが我々に一礼した。
「自由惑星同盟と銀河帝国、長い戦が続いておりますが、この様な催しの仲立ちをさせて頂くのはフェザーンにとっても名誉な事です。ああ、紹介致します、銀河帝国の…大使とでも申しましょうか、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥にございます」
剛毅、という文字を人に例えたら目の前の人物になるであろう…と思わせる軍人が静かに頭を下げた。ここからのやり取りはすべて事前に決められたものだ。
「帝国元帥、フォン・ミュッケンベルガーです。青天の霹靂という言葉が合うかどうかは分からないが、この様な機会を設けて下さった事、感謝にたえません」
続いてルビンスキーが紹介したのは、帝国軍幕僚副総監ヒルデスハイム伯爵だ。
「帝国軍上級大将、フォン・ヒルデスハイムです…元帥閣下、青天の霹靂は失礼でありましょう。素直にお喜び下さい…いや失礼、お手柔らかに」
ルビンスキーが此方に目配せした。同盟側はここで皆が起立する事になっている。
「お二人共、お顔をお上げ下さい。自治領主殿が申しました様に、同盟建国の経緯から不幸にも両国は戦争状態にはなっておりますが、戦っている兵士達には罪はありません。彼等の処遇について何とか出来ないものかと愚考した次第です…紹介致します。まず私はヨブ・トリューニヒトと申します。私の隣に控えますのはウォルター・アイランズ君です」
「ウォルター・アイランズです。どうぞよしなに」
起立したまま、深く一礼する。互いの高等弁務官については紹介はない。事前に分かっている事柄だからだ。ルビンスキーが我々の一礼を受けて口を開こうとしたのを手で制止した…これも前もって決められた仕草だ。
「元帥閣下、そちらに控えておられるご婦人方はどなたですかな」
「手前に居られるのはグリューネワルト伯爵夫人です。非公式ながら、皇帝陛下の御名代として参られております」
グリューネワルト夫人は皇帝の正室ではない。故に名代ではあっても正式な使節の一員ではない、という事になっている。
「奥に控えているのはヴェストパーレ男爵夫人。グリューネワルト伯爵夫人の世話役として同行しております」
二人共事前資料で顔は見ていたが、二人共美人だ。グリューネワルト夫人は儚げな、ヴェストパーレ夫人は闊達…という印象を受ける。
「さあ、自己紹介も終わりました。ここからは自由にご歓談頂けたら幸いです」
ルビンスキーは不必要な程明るくそう言うと給仕係を呼び入れた。入室した給仕係がそれぞれのグラスにワインを注いでまわる。ご歓談か…これ以降は捕虜
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