激闘編
第九十九話 捕虜交換式前夜
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「それは仕方ないな」
ブルームハルトの報告通り、睨み合いが続いている事以外は異常がない。しかし、捕虜交換の場に俺達が居る事自体が帝国軍の感情を逆撫でしているのではないか…と思わなくもない…晩餐会は一九〇〇時から、予定では二二〇〇時には終了する。そろそろ出席者達がホテルに訪れ始める頃だ。会場に入る出席者達の所持品検査、身体検査は両軍共同で実施する。事前の取決めとして、なるべく血の気の少ない者を選抜して行う事になっている。突然殴り合いが始まるのを避ける為だ。両軍共同で検査を行うのも、不測事態が発生した時に責任の擦り合いになるのを避ける為…必要な措置かもしれないが、まどろっこしい事この上無い。
「ブルームハルト、会場のウェイターに言って、何か飲み物を貰ってきてくれ」
「任務中ですよ」
「それくらい解っている、水で構わん」
ブルームハルトがドアを開けようとすると、ノックの後、帝国軍の制服を着た男が入って来た……お前は!
「久しぶりだな。元気でやっているか」
18:10
ホテル・シャングリラ、晩餐会控室、
ヘルマン・フォン・リューネブルク
「久しぶりだな。元気でやっているか」
「リューネブルク、貴様!」
俺が避けるのと同時に怒りのこもった右の拳が空を切る。
「おいおい、捕虜交換を台無しにするつもりか」
「貴様…貴様のせいで俺達がどんな目にあったのか知らんだろう!」
怒りのこもった左の拳は、ブルームハルトか、こいつは…ブルームハルトが必死に押さえていた。
「連隊長、駄目ですってば!」
ブルームハルトのその言葉で我に返ったのだろう、目の前のシェーンコップは大きく肩を揺らしながら、深呼吸をした…余程酷い目にあったのだろうな…。
「どんな目に、か……それは謝罪しよう。だがこの場にお前達が居るという事は、拾ってくれる神に出会ったという事だな。イゼルローン要塞での功名は、俺の耳にも入って来たぞ」
「…お陰様でな。何の用だ、その前に何故貴様が此処に居る」
「貴様達と同じ様に、俺にも拾ってくれる神が居た、という事だ。捕虜交換使節の護衛を任されている…まあ、座れ。ブルームハルト、ウェイターに言って飲み物を貰って来い…大丈夫だ、お前が居なくなっても何もせん」
後ろ髪を引かれる様にブルームハルトが控室を出て行く。シェーンコップが座り、俺も座る…そんな眼で見るんじゃない、成長の無い奴だ…。
「同盟側の関係者名簿を見た。すると懐かしい名前があった。警備責任者に一言挨拶と思ってな。寄らせて貰った」
「こちらに渡された名簿には貴様の名前はなかったぞ」
「俺の名前が出たのでは、同盟側が気を悪くすると思ったのでな。名を伏せて貰ったという訳だ。俺のせいで捕虜交換が台無しになるのは御免だからな」
ブルームハルトが飲み物を取って戻って来た
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