激闘編
第九十九話 捕虜交換式前夜
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ネワルト伯爵夫人というのは…皇帝の寵姫とやらではなかったかな」
「はい。もう一人のヴェストパーレ夫人というのは小官も知りませんが…委員長、よくご存知ですね」
「類い希なる美貌の女性と聞いているよ。しかし、何故皇帝の側室がこんな所に…我々を骨抜きにするつもりなのかな」
「さあ…フェザーン観光でもしてみたいと思ったのでしょうか。皇帝の寵姫ともなれば大抵の我儘は許されるでしょうし」
「我儘だったとしてもだ、敵国同士のやり取りの真っ最中にそんな重要人物を観光になど同行させないだろう、普通に考えて」
「敵意は無い…というアピールかもしれません、自信はありませんが」
「自信はない、か…。だが、是非ともそうであってほしいものだ」
10:45
フェザーン、フェザーン自治領主府、
アドリアン・ルビンスキー
「…帝国からはミュッケンベルガー元帥、ヒルデスハイム伯、レムシャイド伯…なのですが」
「どうした、補佐官」
「いえ、閣下はご存知でございますか、その…」
「グリューネワルト伯爵夫人だな。皇帝陛下のご寵愛を一身に浴びておられるお方だ。使節の一行に入って居られる」
「既にご存知でございましたか。皇帝陛下の名代という事でございますが」
遅かったな、ボルテック。こういう妙な人事はもっと早くに知っておくべきなのだがな…。
「発表はされていないがな。公式にはそうなっている。補佐官はどう思う?」
「はい、今回の捕虜交換は皇帝陛下の勅裁を得ておりますから、名代というのはあながち間違いではないかと」
「確かに名代というのは間違いではない。重要なのはそこに誰の意図が働いているかだ」
今回の捕虜交換だが、帝国政府は関与せず、という立場をとっている。交渉の主務者は帝国軍だ。対する同盟も、捕虜交換の打診自体は同盟政府が行ったが、実務交渉は国防委員会が行ってきた。要するに、窓口はフェザーンだが、互いの軍同士のやり取りという事になる。現場同士のやり取りなのだ、同盟はともかく、帝国政府が関与しないのなら皇帝の許可は必要ない筈なのだ。
「例の有志連合軍とも関わりがあるものかと推察致しますが」
「そうだろうな。いささか薬が効き過ぎた様だ」
「申し訳ございません」
「まあよい。同盟の方はどうかな」
「中々隙を見せません。ですが徐々に例の者達は同盟社会に浸透しております」
「ならばよい」
「ありがとうございます。では、本題に戻らせていただきますが…どうなさいますか、実行の手筈は整っておりますが」
「うむ。やってもらおう」
18:00
ホテル・シャングリラ、晩餐会会場控室
ワルター・フォン・シェーンコップ
「連隊長、ホテル周囲の配備状況、異常ありません」
「本当か?」
「帝国軍と睨みあっている、という事以外は」
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