激闘編
第九十九話 捕虜交換式前夜
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ないのかね?」
「ここでは流通安全保障コンサルタントという肩書でやっておりまして…捕虜交換が決定するまで、この建物には入った事はありません」
「ふむ。この建物には、という事は、向こう側の建物にはよく出入りしているという事かな?」
委員長の視線の遥かな先には帝国の高等弁務官府がある。
「よく…とまではいきませんが。諜報活動にはコネや袖の下が一番ですからね…コンサルタントというのは意外に儲けがいいのです。お陰で私の懐も潤うという訳でして」
「ふむ…ウィンチェスター君は優秀な部下に恵まれているな。懐云々は聞かなかった事にしよう。どうだろう、軍を辞めて私のブレーンにならないか」
「まことにありがたいお話ですが、遠慮させていただきます」
「何故かね?」
「こちらの方が面白いもので」
「正直な男だな、君は」
「時と場合によりますよ」
俺がこの場所で国防委員長とこんなどうでもいい話をしているのも、弁務官…ヘンスロー氏のせいだった。捕虜交換の打診は確かに同盟の高等弁務官府を通じてフェザーン自治領主府に伝えられた。そして自治領主府から帝国の高等弁務官府に話が行き今に至るのだが、フェザーンにおける捕虜交換に関わる実務…捕虜交換式を行う場所や段取りなど、必要な事をまったくやっていなかったのだ。式自体の実務交渉は自治領主府を通じて行うのだから、特段難しい訳でもない。こちらの代表は確かに国防委員長だが、政府同士の交渉ではないから、現場でやる事はそこまで多くない。ましてやここはフェザーンだ、式典の細部については彼等の提示したプランを修正すればいい。ヘンスローが駄目なら、その下にいる首席駐在武官のヴィオラ大佐がやればいいのだが、この男も事なかれ主義の塊だった。ヘンスローの指示がないからと、何もやろうとはしなかった。
「まあ、ウィンチェスター君が、直接君をフェザーンに派遣した意味がよく理解出来たよ。弁務官府は機能していない」
「パーティの類いにはよく参加していた様ですがね」
俺がそう相槌を打つと、国防委員長は大きくため息を吐いた。
「パーティね、大いに結構だ。生きた情報を得る事が出来るからね。ここはフェザーンだし、弁務官や武官達が多少私腹を肥やそうと全く構わんが、せめて任務には励んで欲しいものだ…この後の予定はどうなっているのかな?」
「一九〇〇時にホテル・シャングリラにて晩餐会となっております。まずホストとしてフェザーン自治領主ルビンスキー氏本人が。そしてその補佐官ボルテック…帝国側からは宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥、帝国軍幕僚副総監ヒルデスハイム伯爵、帝国高等弁務官レムシャイド伯爵…これは」
「どうした?」
「いえ、あと御婦人が二名なのですが、グリューネワルト伯爵夫人、ヴェストパーレ男爵夫人…」
「バグダッシュ君、そのグリュー
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