激闘編
第九十九話 捕虜交換式前夜
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という線で陛下を説得したのだが…許す陛下も陛下、と言わざるを得ない。口では簒奪など許さぬ、かかってこいと言いながら、ミューゼルを援けて居られる。奈辺に真意があるのか判らぬお方ではある…。
「叛乱軍…自由惑星同盟、自由の国と言いながら、それほど自由でもありませんよ。特に小官の様な帝国から亡命した家柄の者にとっては」
「あら…帝国から亡命した方々は、叛乱軍にとっては有為の人材ではなくって?」
「亡命する理由も様々ですから、男爵夫人。同盟建国当時からかの国に居る者達と違い、我々の様な者は差別の対象になっているのが実情です。小官は自分の能力を発揮できる場所に生まれたかった。それで帝国に帰参したという訳です」
リューネブルクがちらりと儂を見て頭を下げた。過去にもこの男の様な存在は幾人も居た。だが帝国に帰参したからといってその能力を発揮出来る地位に着いた者はほとんど居ない。それに、オフレッサーはこの手の男は好まぬであろう。叛乱軍にいた頃の経歴も見たが、白兵戦技もさる事ながら、作戦指揮も中々のものだ。擲弾兵指揮官でなくとも艦隊要員としてもやっていける力量はあるだろう…。
「ところで男爵夫人、伯爵夫人は如何お過ごしかな。慣れぬ艦艇生活で窮屈な思いをしていなければよいのだが」
グリューネワルト伯爵夫人はほとんど部屋から出ていない様だった。陛下の名代という事もあって行幸用の応接室を夫人達の居室にしたのだが…フン、これでは儂はまるでミューゼル姉弟の保護者ではないか…。
「アンネローゼ…いえ、伯爵夫人も閣下のお心遣いには感謝しておりましたわ。まさかフェザーンに行けるとは、と。ワタクシもです」
陛下に掛け合えば伯爵夫人の身を預かる事は可能であろうとは思っていた。だが彼女の身の置場をどうするか…それが問題だった。オーディンに置いておけばベーネミュンデ侯爵夫人がまたぞろ何か企むやも知れず、ブラウンシュヴァイク公に保護の名の元に拐われてしまうかもしれなかった。だが儂がそのまま連れて行けば身辺警護も問題ない…そう思って同行を求めた。そこまではよかったが、問題が発生した。グリューネワルト伯爵夫人は陛下の名代ではなく、陛下が儂に彼女を下賜したのではないか…そういう風聞が宮中に広まったのだ。夫人が儂に同行する事が公にされなかった事も、それに拍車をかけた。寵姫が宮中を出るのだ、発表はなくともあっという間に貴族達には伝わる…伯爵夫人にとってはとんでもない話だが、寵姫を下賜されるのは臣下にとって最大の名誉とされている。この風聞が大貴族達を刺激したのだ。
〜陛下は貴族を頼りとせず、軍を重んじている〜
ミューゼルにとって後顧の憂いは無くなったものの、有志連合軍の結束を強める結果になってしまった。有志連合軍…貴族の艦隊がたとえ練度が低いとはいえ、今頃はシャンタウ
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