【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第7章】アウグスタ王国の王都ティレニア。
【第5節】三人の逃亡劇とその唐突な幕引き。
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も知れません。でも、小児のうちから、諦めることばかり上手になってしまったら、人間はそのまま『何も成し遂げられない大人』になってしまいますよ。あなたは、それでもいいんですか?」
「……でも、このままでは、あなたたちが罪人に……」
(この状況で、この人はどうして自分のことよりも、わたしのことを心配しているの?)
ツバサの想いが視線に乗って自分の中にまで流れ込んで来たような気がして、ユリアは思わず胸が苦しくなってしまいます。
すると、ツバサは不意に穏やかな微笑を浮かべ、ユリアをこう励ましました。
「罪と言っても、いきなり死罪になるほどの罪ではないのでしょう? それなら、諦めるのは、やれる限りのことをひととおりやってみてからでも遅くはありませんよ。もう少しだけ、私たちと一緒に『小児じみた悪あがき』を続けてみませんか?」
「……はい!」
(誰かに、こんな風に言ってもらえたのって……わたし、初めて……。)
ユリアはもう何だか胸が一杯で、それ以上は何も言葉が出て来ませんでした。
しかし、その後も結局、三人は上下道をひとつも下ることができませんでした。
それどころか、さらに上へ上へと追いやられ、ついにはツバサがユリアの左手を、カナタがユリアの右手を引いて、とうに息の切れた彼女を無理矢理に走らせているような形となります。
そして、また環状道で前後を挟まれ、やむなく上り道に入ると、今度は正面に「明らかに今までとは色も様式も異なる壁」が見えて来ました。
しかし、背後からは追手が迫っており、今は足を止めている余裕などありません。
カナタ《ツバサ! さすがにもう「犬笛」の出番なんじゃないのかなあ?(弱音)》
ツバサ《ええ。でも、私たちが取り押さえられてから、ザフィーラさんが来たのでは、かえって面倒なコトになります。……どこかで二分ほど時間を稼げると良いのですが……。仕方がありません。カナタ、飛びましょう!》
カナタ《この結界の中で? ボクらの魔力じゃ、あまりマトモには飛べないヨ?》
ツバサ《それでも、『二人でユリアを連れて、正面に見えるあの壁を乗り越える』ぐらいのことなら、何とかなるでしょう。一旦、あの中に入ってしまえば、二分ぐらいは稼げると思うんです。》
カナタ《まあ、それぐらいなら、できるだろうけど……。ええい、やってみるか!》
ツバサ《ええ。やりましょう!》
ユリア「あの……お二人とも……この先は……もう……」(息も切れ切れ)
ツバサ「ユリア、飛びますよ! しっかりつかまっていてください」
ユリア「ええっ? と、飛ぶって??」
カナタ《それじゃあ……いち、にの。》
二人そろって《さん!》
双子はユリアの
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