【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第7章】アウグスタ王国の王都ティレニア。
【第5節】三人の逃亡劇とその唐突な幕引き。
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があってのことなのでしょうか。ツバサは、ユリアが一般の市民と直接に口を利くことを巧妙に避けて、代わりに自分が会話を担当します。
それでも、ユリアは本当に楽しそうでした。
おそらくは、今までずっと本物の「箱入り娘」だったのでしょう。下町では、もう見るもの聞くもの、すべてが珍しいようです。
「わたし、昔から一度こうして下町を歩いてみたかったんです。今日は、お二人のおかげで、夢がひとつ叶いました」
ユリアは、見ている方が楽しくなって来るほどの生き生きとした笑顔で、双子にそう語りかけます。
こうして、ユリアは、まるでカナタやツバサとは昔からの幼馴染みであるかのように、親しく打ち解けて行きました。
しかし、食事も一段落して、いよいよ「ユリアの母親探し」を始めると、三人はいきなり「見えない壁」にブチ当たりました。
『実は、この人を探しているのですが』と言って例の似顔絵を見せると、みな一様に目を丸くして驚くのですが、それ以上は誰も何も話してはくれません。
そうこうしているうちに、誰かが通報でもしたのでしょうか、何処からともなく王国軍の兵士たちが現れ、三人を遠巻きに取り囲み始めます。
「ヤバイ! 見つかった」
「ユリア、走れますか?」
「えっ? ああ、はい!」
そうして、三人はしばらくの間、小児の体格を活かして、人混みの中を巧みに逃げ回っていたのですが、兵士らは連携して次々に(そして、あくまでも遠巻きに)道を塞ぎ、三人を少しずつ、着実に追い立てて行きます。
カナタ《ヴィータさん! 暴れて敵の注意を引き付けるのなら、もっとちゃんと引き付けといてヨ! ……ツバサ! あいつら、魔法か棍でぶっ飛ばしちゃダメかなあ?》
ツバサ《あの数では、どのみちキリがありませんよ。それに、提督からも『なるべく現地の人たちを傷つけないように』と言われてたでしょう? ユリアも見ていることですし、ここは素直に逃げましょう。》
三人はしばらく、街路から路地を伝ってまた別の街路へと逃げ続けていましたが……兵士たちに追い立てられて、また何本目かの路地を抜けると、今度は大通り(上下道)に出てしまいました。ここから先には、もう兵士らの動きを遮ってくれるほどの人混みは無く、しかも、退路はすでに断たれています。
しかし、運よく、その上下道の中央分離帯には、今しも例の〈誘導路〉が出現していました。カナタの祈りが天に届いたのか、何処かでまたヴィータか誰かが暴れてくれたようです。
【ちなみに、この時、実際に「軽く」暴れていたのは、街中でふと合流した第四分隊と第三分隊。つまり、「ヴィクトーリア、エドガー、コニィ」と「ジョスカナルザード、ゼルフィ、ノーラ」の六人でした。もちろん、それぞ
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