暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第7章】アウグスタ王国の王都ティレニア。
 【第3節】カナタとツバサ、潜入捜査開始。
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へし折りました。
 もちろん、それは(馬車を「普通に」運用している限りは)折れるはずの無い頑丈な木材です。馬たちはその衝撃に驚き慌てて、そのまま(ながえ)の半分を引きずりながら逃げて行ってしまいました。
 そうした光景を間近に見てしまった御者も、ヴィータから(にら)みつけられると、思わず悲鳴を上げて御者台から飛び降り、馬たちの後を追うようにして逃げて行きます。

「待てぇ! お前、御者の分際で勝手にどこへ行く気だぁ!?」
 馬車の窓から身を乗り出して、チョビ(ひげ)の「お貴族様」が狼狽も(あらわ)に悲鳴じみた声を上げましたが、ミカゲはそれに構わず、オルドメイを押しのけて、両手を馬車の下に差し入れると、まずは馬車の片側だけをぐっと持ち上げました。
 もちろん、これも「普通は」人間の力で持ち上げられるような重量では無いはずです。
「中の人! 早く逃げないと、死ぬデスよ!」
「ひっ! ひぃぃぃぃ〜〜っ!」
 チョビ髭の男爵は、今度はあからさまな悲鳴を上げながら、大きく横に傾いた馬車の中から半ば(ころ)げ落ちるようにして飛び降り、馬たちと御者の後を追うようにして、その場から逃げて行きました。
 あるいは、彼は有名な「嫌われ者」だったのでしょうか。人集(ひとだかり)の中からは、どっと歓声が上がります。

 そこで終わっておけば、まだ良かったのですが……。
 ミカゲの問うような視線に、ヴィータがうなずいてみせると、ミカゲは両手でそのまま馬車を丸ごと頭の上に持ち上げました。周囲の群衆は一転して恐怖の声を上げます。
「そちらの人たち! ()けないと本当に死ぬデスよ!」
 ミカゲは一言、そう警告を発してから、そのまま馬車を高々とブン投げました。群衆は悲鳴を上げながら、蜘蛛(くも)の子を散らすように逃げて行きます。
 そして、馬車は石畳の上に落ち、その場にぐしゃりと潰れ果てました。幸い、負傷者は一人も出なかったようです。
 ミカゲが『どうデスか?』と言わんばかりの「期待に満ちた笑顔」を向けると、ヴィータは右手の親指を立てて、念話でただ一言、『よし!』と(こた)えました。
 ミカゲは自分のロードにほめられて満面の()みを浮かべましたが、ザフィーラは思わず呆れ顔を浮かべてしまいます。
《おいおい。そこは、『よし!』じゃないだろう。》
《人的被害は出してねぇし、状況も適度にかき乱した。お前の言うとおりにしてやっただけじゃねぇかよ。アタシらはしばらくこの路線で行くから、お前はお前のやり方で勝手にやってくれ。》
 よほどストレスが溜まっていたのでしょう。ヴィータはすでに『聞く耳など持ってはいない』という態度でした。

 一方、オルドメイは()(すべ)も無く、ただ呆然とその場に立ち尽くしていました。いかにも『困惑と無
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