第135話『接敵』
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この状態で鏡に触れると、鏡の中に吸い込まれてしまう。そんな光景を何度も見た。
扉のようなその鏡の向こうはどこにつながっているのか。もしかしたら、このまま帰ってこれないかもしれない。そう思うと、目尻に涙が浮かぶ。
まだ、思い残すことがたくさんあった。もっと友達を作りたかったし、もっとみんなと遊びたかった。私を救ってくれたヒーローに、私の一番の親友に、私を許してくれた優しいヒロインに、そして私を好きでいてくれた男の子に、もう一度会いたかった。迷惑かもしれないけど、最後にお別れだけでも伝えたかった。
「……」
歩みを止めた私を急かすように、男が肩を押す。その時だった。
「──その子に、触るんじゃねぇ!!」
その声は正面から。私が入るはずだった鏡の中から、突如として男子が現れる。彼は私の肩を掴んでいた黒フードの男の顔面を蹴り飛ばし、私を拘束していた私もすぐに引き剥がした。
「なん、で……」
恐怖で堰き止めていた涙が、安心と共に溢れ出す。同時に、口からもか細く言葉が零れた。
ここにいるはずのない彼が、拒んだはずの彼が、もう会えないと思っていた彼が、助けてくれた。
私が小さく漏らした言葉を聞き逃すことなく、彼は──大地君は答えてくれる。
「なんでって、知ってるでしょ? 俺が優菜ちゃんのこと好きだからだよ」
そう言ってニカッと笑う彼に、私はたまらなく惹かれていた。
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