【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第7節】各人の兄弟姉妹に関する雑談。
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たので、私たちは感覚的には『二人で一組の一人っ子』か、あるいは『二人で一組の末っ子』という感じでした」
他の陸士らはローゼン首都標準語で、口々に『へえ〜』とか、『なるほど、双子って、そうなるんだね〜』などといった納得の声を上げました。どうやら、みな、現地語の発音にもだいぶ慣れて来たようです。
「では、カナタとツバサの他に、末っ子の者はいるか?」
ザフィーラがそう呼びかけると、まずはノーラとディナウドとジェレミスが手を挙げ、少しだけ遅れて、意外にもバラムが手を挙げます。
三人の陸士は揃って陸曹に順番を譲り、バラムはそれを受けて、ごく丁寧な口調でこう語り出しました。
「自分には、兄が二人、姉が一人おりまして、血筋の上では、自分は末っ子になります。しかし……母は40歳にもなってから『全く想定外の妊娠』をしてしまったのですが、それで、年が明けてから生まれた子供が自分でして……その時に、いろいろあって、自分は最初から、敷地内の質素な別棟に移され、そこで『母方の叔母』と『引退した老メイド長』とに育てられました」
「あ。その叔母さんって、さっき言ってたセディーゼさんですか?」
バラムは、カナタの指摘に大きくうなずいて、また言葉を続けます。
「彼女はIMCSを引退した後、早くに両親を亡くすなど、さまざまな不幸が重なって、ついに無一文の身と成り果てたため、両親の生前に『玉の輿』に乗っていた美人の姉を頼って、その嫁ぎ先に『やむを得ず』身を寄せました。
そして、自分が生まれた頃には、彼女はもう『姉夫婦の使用人』のような立場に立たされていたのですが……自分は何の疑問も抱かずに、彼女を母親と信じ、老メイド長を祖母と信じて、三人きりの家庭で倹しく育ちました。
ですから、個人的な感覚としては、自分は一人っ子です。実のところ、ドルガン家はエルセアでは有数の名家なのですが、自分には今もその一員だという感覚が……正直に言うと、あまりありません。そもそも、7歳になるまで、自分は『使用人の子供』なのだと信じて育ちましたし、結果として、今でも心情的には、実の父母や兄たちや姉とは疎遠なままとなっています」
「だとすると……バラムさんが7歳の時に一体何があったんですか?」
ツバサの疑問にも、バラムは必要以上に丁寧な口調で答えました。あるいは、『なるべく感情を交えずに、淡々と話そう』と心がけて、意図的にそうしているのかも知れません。
「新暦75年度の大事件と言えば、首都圏の方では、当然に〈ゆりかご事件〉が一番の大事件なのでしょうが、エルセアでは、むしろ翌年の2月に起きた『列車事故』の方が有名な事件です」
エルセア出身のマチュレアとフォデッサは、咄嗟に『ああ! そう言えば、
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