【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第4節】守旧派の内情と〈放浪者〉エリアス。
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さて、時間は少しだけ遡って、はやてとリインが第八地区に上陸してまだ間もない頃のことです。
その時点で、惑星ベルカ中央大陸の上空には、〈スキドブラドニール〉以外にも、もう一隻の次元航行船の姿がありました。例の大型輸送船です。
その船橋では、髭面の船長と副長が、いささか苛立ちながらも今は途方に暮れていました。
彼等は守旧派に属する人物で、管理局の〈上層部〉からは一体どういう訳か、〈スキドブラドニール〉の動向を、特に『ベルカ世界の上空で何をしたのか』を、詳細に記録して報告するようにとの密命を受けており、『もし可能であれば、〈スキドブラドニール〉とベルカ地上との交信内容も把握するように』とまで言われていたのです。
しかし、現地の通信担当者たちからの情報提供によれば、〈スキドブラドニール〉から地上への通信は『今からそちらへ誰それを上陸させる』といった内容の「業務連絡」が二件あっただけでした。今は、執務官らが第五地区に、准将らが第八地区に上陸しているようですが、当然ながら、ここからでは現地での会話の内容までは解りません。
(と言うより、そもそも盗聴をする手段がありません。)
《苛立つ気持ちも解りますが、こうなってしまった以上は、もう仕方が無いんじゃないですか?》
船長の様子を見かねた副長は、他の乗組員たちには聞かれないように念話で、もう長い付き合いになる直接の上官にそう声をかけました。髭面の船長は『お前なあ……』と言わんばかりの表情で睨みつけて来ます。
《幸い、どちらの地区にも「こちら側」に内通している者たちがいます。あとは彼等に、どんな会話があったのかをそれとなく探らせましょう。もう、それで良いじゃないですか。私たちにできるのは所詮、ここまでですよ。》
すると、船長はひとつ大きく息を吐いて肩を落としながらも、念話では思わずこう毒づきました。
《わざわざ上陸して話すとか、俺に対する嫌がらせかよ! ……まったく。あの「生きた伝説」とやらは、こちら側の都合を全部、知っててやってるんじゃないだろうな。》
実際には、『知った上でやっている』どころか、『自分の掌の上で踊らせている』に近い状況だったのですが、彼等はまだ自分たちがはやてに踊らされていることにも気がついてはいません。
彼等の輸送船は現在、転送に適していない「大型の貨物」の投下を始めたところだったのですが、はやては船長らの注意を自分たちの側に引き付けておくことで、「時間的にも心理的にも」貨物を詳細に検分する余裕が無くなるように仕向けていたのです。
また、この輸送船は今回、各地区で必要とされる物資ばかりではなく、ついでに、わずか十名ほどの乗客も乗せていたのですが、貨物の投下の
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