【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第4節】守旧派の内情と〈放浪者〉エリアス。
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区から始めて中央大陸の上空を左回りに動き、わずか十名ほどの乗客を次々に各々の目的地へと転送していきました。最初に転送されたのは厄介者のエリアス・クローベルですが、もちろん、輸送船の船長や乗組員たちは、彼の素性になど何の関心も持ち合わせてはいません。
しかし、彼の戸籍上の本名は「エリアス・クローベル・ダールグリュン」で、「クローベル」は彼の母リアンナの元々の苗字でした。
要するに、彼の正体は、ヴィクトーリアの父方の叔父にして、ジークリンデの「人生の師」でもある、〈放浪者〉エリアスその人だったのです。
こうして、エリアスは「カバンひとつ」という身軽な出立で第五地区に上陸し、フランツ博士の歓待を受けたのでした。
エリアスが一人だけ第五地区に転送されて来た時には、すでに「それなりの時間をかけて大気圏内を滑空して来た一群の飛行ユニットたち」も、みな滑走路への着陸を終えていました。
「やあ。よく来たね、エリアス君。歓迎するよ。……ところで、私は、君は週末の便で、人員搬送の方が主体の船で来るものだとばかり思っていたのだが……」
「ああ、義兄さん。わざわざお出迎えいただけるとは恐縮です。貨物船の中からでは御連絡もできず、結果的に突然の来訪になってしまい、申し訳ありませんでした」
殊勝にも、エリアスは出会い頭にひとつ深々と頭を下げてみせました。
この二人は、ただ『エリアスの兄ハロルドが、フランツの妹ベルタと結婚した』というだけの間柄で、二人の間に直接の血縁関係はありません。それでも、33年前にハロルドとベルタの間に第二子ヴィクトーリアが生まれて以来、この二人は妙に気が合って、まるで実の兄弟のように親しくしていました。
職業的にも性格的にもほとんど共通点の無い、ちょっと不思議な取り合わせですが、あえて言うならば、『それぞれに、実の父や兄とはあまり仲がよろしくない』というのが、この二人の共通点でしょうか。
エリアス(51歳)は人員転送用の「方形の基壇」から降りると、フランツ(64歳)の勧めに従って、まるでオープンカフェのような感じの椅子に座りました。
そして、フランツがテーブルをはさんだ向かいの席に着くと、エリアスは、全く先程の言葉の続きのような口調で「突然の来訪」になってしまった理由についてこう語り出します。
「実は、昨日の昼前に、〈本局〉での用事が思いのほか早めに片付いたので、試しに次元港を覗いてみたら、『夕方の便が予定を繰り上げて、今から出航する』と言うので、慌てて飛び乗って来た、という次第なんですよ」
「なるほど。つい先程も、届くのは夜になると思っていた貨物が、いきなり滑走路の方に降りて来たから、一体何事かと思っていたんだが……輸送船の出航時間その
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