【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第4節】守旧派の内情と〈放浪者〉エリアス。
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方が優先事項なので、乗客たちの地表への転送は後回しになっていました。ところが、じきに、そちらの担当者から船長の許へ『乗客たちが「早く降ろせ」と騒いでいる』との報告が上がって来ます。
船長は『こちらの事情を説明して乗客たちを静かにさせるように』と一般的な指示を出してから、改めて担当者に具体的なことを訊きました。
「普段なら、そんな騒ぎは起きないぞ。今回は、誰かタチの悪い煽動者でも乗っているのか?」
「中心になって騒いでいるのは、エリアス・クローベルという男です。昨日、出航の直前になって、慌ただしく駆け込んで来た人物ですよ」
船長が手許のディスプレイに乗客名簿のデータを出して、その人物の「自己記入欄」に目を通すと、その職業欄には堂々たる筆跡で「無職」と書かれていました。
「どうやら酒を持ち込んでいて、同室の者たちにもふるまっていたらしく、彼以外にも何人かが昼間から少し酔っているようです」
「どうして、そんな問題のある奴を乗せたんだ?!」
「申し訳ありません。しかし、あのフランツ博士の身内と名乗った上に、渡航許可証も間違いなく本物でしたので、私の立場では乗船を拒否することなどできませんでした」
担当者は、形式的には頭を下げていましたが、『別に、私は悪くありませんよね?』と言わんばかりの表情です。
船長は再び大きな溜め息をつき、そちらの担当者に『とにかく……』と先程の一般的な指示をもう一度、繰り返してから通信を切りました。
(まったく、今回の仕事は解らないことだらけだ。第八地区というのも、何をやっている場所なのか、よく解らないし……。それにしても、『自分の行動とは関係の無い出来事で、自分の評価が下がってゆく』というのは、どうにかならんものかなあ……。)
外から見ていると、船長という役職は、さも「一国一城の主」であるかのようにも見えるのですが、時空管理局という巨大な組織の中では、三佐という階級は所詮、『上からは叩かれ、下からは突き上げられる』という中間管理職でしかないのです。
船長はがっくりと肩を落としつつ、今度は貨物投下の担当者らに『作業を急ぐように』と命じたのでした。
(実は、これすらも「はやての思惑どおり」だったのですが。)
一方、貨物船の容積の半分ちかくを占める巨大倉庫からは、「規格化されたコンテナ」が順番に運び出され、投下用のスペースで次々に「飛行ユニット」を取り付けられていました。
そのユニットの実体は、単なる「船底と船首と安定翼と外殻」の集合体で、作業員はまず「長方形の船底」の上に規格化されたコンテナを乗せて固定します。
次に、その船底の四辺から(喩えて言えば、トラックの荷台のように)少しばかり上へと伸びた頑丈な枠組みに、「空気抵抗を減らすための船
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