【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第3節】古代ベルカに関するエドガーの講義。
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でしたが、最後まで聖王家に忠誠を捧げ、滅びゆくベルカと運命を共にしました。ガレア王国の〈冥王〉イクスヴェリア一世だけは消息不明ですが、一説によれば、彼女は今もどこかの世界でひっそりと眠り続けているのだそうです」
エドガー自身は、もちろん、『冥王イクスヴェリアが今はミッドの聖王教会本部で保護されている』という事実を知っているのですが、それは今や『特秘事項あつかい』なので、ここではわざとボカした言い方をしました。
(ザフィーラもすかさず念話で、カナタとツバサに『くどいようだが、イクスヴェリアの件に関しては、彼女自身の身の安全のためにも、一般の陸士たちには決して口外しないように』と言い含めます。)
「ただし、ここで王の名に『何世』と付けたのは、あくまでも現代における仮の呼称です。当時のベルカでは名前もまた財産のように同じ一族の中で継承されてゆくことが多く……まだ生きている親族や、まだ『祀り上げ』が終わっていない祖先の名前をそのまま赤子につけることは、さすがに避けられていましたが……結果として『一族の系譜を読むと、数世代ごとに何度も繰り返し同じ名前が出て来る』という状況も全く珍しくはありませんでした。そこで、古代ベルカでは一般に、王の名には『綽名』や『長い称号』をつけて区別をしていたのです」
「その『長い称号』というのは、具体的にはどういったものだったのでしょうか?」
「そうですね。例えば、冥王イクスヴェリアは当時、少なくとも敵国では、『屍の群れを駆る冥府の炎王』と呼ばれていましたし、同様に、生前の剣王アルトゥリウスも『屍の山を踏む千刃の兇王』と呼ばれていました。
しかし、そうした称号や綽名の類が全く伝わっていない王も多いので、現代では区別のため、仮に『何世』と付けて呼び分けているのです」
そこで、不意に艦橋の方から、こんなアナウンスが入りました。
「上陸部隊の皆様にお知らせします。当艦は、つい先程、准将ほか一名を回収しました。現在は、執務官ほか一名を回収するため、第五地区の上空へと移動中です。
なお、当艦はその回収作業を終えた後、直ちに惑星ベルカの周回軌道から離脱し、そのおよそ1刻後、1500時には新航路に突入する予定です」
それを聞くと、エドガーは小さくうなずき、こう言って皆に発言を促しました。
「それでは、このホールでのお話は、次の質問で最後にしましょう。何か、談話室へ戻る前に訊いておきたいことはありますか?」
すると、マチュレアがいささか躊躇いがちに右手を挙げました。
「あの……ちょっと俗っぽい話でも構いませんか?」
「良いですよ。どうぞ」
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