【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第3節】古代ベルカに関するエドガーの講義。
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は嬉々としてハードカバーの表紙を開き、さらにページをめくって、いかにも誇らしげに「ユーノ・スクライア」のサインを皆々に披露します。
そのドヤ顔に、カナタは内心、ちょっと引いてしまいました。
《うわあ……。エドガーさんの、司書長さんに対する評価が熱すぎる……。》
《しかし、よくよく考えてみれば、私たちは、なのは母様やヴィヴィオ姉様のコネで特別に親しくさせていただいているだけなのであって……多分、一般世間では、こちらの方が『本来の、あるべき評価』なんでしょうねえ。》
ツバサの感想はごく正当なものでしたが、カナタはまだ少し腑に落ちないような表情をしていました。
「いや、サインも驚きですが……今でも、パルプでできた『紙の本』って、あるところにはあるんですねえ」
レムノルドは、素直に感嘆の声を上げました。おそらくは、今時の若者らしく、紙に印刷された本など、もう何年も読んだことが無いのでしょう。
「現代は『大半の著作物が最初からデータの形でのみ出版され、いきなり通信用の端末で誰にでも読めてしまう』という時代ですが、そんな時代だからこそ、パルプはステータスなのです!」
「ステータス、ですか?」
レムノルドが『ちょっと意味が解らない』という表情を浮かべたので、エドガーはひとつわざとらしい咳払いをしてから、以下のような説明を加えました。
「余談になりますが、近年のミッドでは、幼児向けの絵本などを除いて『紙の本』を目にする機会がほぼ無くなってしまったことについても、少しだけ御説明しておきましょう。
皆さんも御存知のとおり、ミッドチルダでは古来、第一大陸にしか人間は住んでいなかったのですが、今からおよそ170年前、旧暦の時代の末期に〈統合戦争〉が始まると、有事にはいろいろな物資が平時よりも多めに必要となるので、第二大陸の北東部には主に鉱産資源と森林資源を得るために『資源供給特区』が設置されました。
そして、実は今もなお、ミッドで消費されているパルプの大半は、この特区で計画的に植林され、伐採された樹木から製造されたものなのです。
しかしながら、現在、ミッド中央政府の政策論争としては、しばしば『今はもう有事ではないのだから、これからは資源供給特区を順次縮小し、本来の自然保護区に戻してゆく方向で政策を考えていった方が良いのではないか』といった提案がなされています。
実際に、ミッド中央政府も新暦の時代になってからは、一貫してパルプの消費量を減らそうと努力を続けており、この数十年間で書籍の電子化が急速に進んだのも、本来はそうした努力の一環としての作業でした。その結果、今では最初から紙で出版される本は、幼児向けの絵本まで含めて、当局が『これには、森林を伐採するに足
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