【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第3節】古代ベルカに関するエドガーの講義。
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中間期以降の、言わば「古代後期」のモノ』であり、少し大袈裟に言うならば、第二戦乱期以前のベルカとは、『我々がまだ知らない「古代前期」のベルカ』なのです。
その一方で、私たちがこれから赴く〈新世界ローゼン〉は、おそらく『古代前期』のベルカ文化を今もそのままに伝えている世界であり、時間さえかければ、歴史的文化的な面でとても多くの知見が新たに得られることでしょう。実は、そうした可能性こそが、『管理局が新世界にこれほどまでに強い関心を寄せている理由』のうちの一つなのです」
エドガー自身は『他にも何かしら理由があるに違いない』と推測していたので、『理由のうちの一つ』という言い回しになったのですが……実のところ、彼も「他の理由」については、『今はまだ具体的には見当がついていない』という状況でした。
(彼等は、まだ〈ルートメイカー〉の存在それ自体を知らされてはいないのです。)
そこで、バラム陸曹がふとした疑問を述べました。
「ところで、今のお話に出て来た『ユーノ・スクライア教授』というのは、一体どういう方なのですか?」
それを聞くと、エドガーは『その一言を待っていた!』とばかりに、彼としては珍しいほどの熱量を込めて、平素よりもわずかに速い口調で語り始めます。
「皆さんには、『無限書庫の総合司書長だ』と言った方が解りやすいかも知れませんね。一般的には、まだそれほど知名度の高い方ではありませんが、学問の世界では、三十代にしてすでに高名な学者となっている方です。
教授は、歴史や言語や哲学を中心として実にさまざまな分野に精通しておられますから、後世の歴史書には、必ずや『ユーノ・スクライアはこの時代のミッドを代表する〈知の巨人〉である』と特筆されることでしょう。
実のところ、〈大脱出〉の終了後は長らく『無人の世界』となっていたベルカ世界に対して発掘調査が解禁されたのは新暦76年、今からほんの19年前のことなのですが、そのわずか8年後には、ユーノ・スクライア教授は早くもこの『歴史的な名著』を世に送り出しました」
エドガーはそう言って、わざわざ部屋から持って来た一冊の分厚い本を教卓の上に立てて、その表紙の『古代ベルカ通史の再構築』というタイトルを皆に見せました。
「この著作が刊行された当初は、学者たちの間でもいろいろな議論が巻き起こったようですが、それから間もなく、この著作の内容がそのまま学会の通説となりました。実は、私が今お話しした『中間期』や『戦乱期』といった用語も、ユーノ・スクライア教授がこの著作で初めて用いた用語なのです。
個人的な話で恐縮ですが、私はつい先日、〈本局〉で教授と直接にお会いする機会に恵まれ、11年前に購入したこの初版本にサインをいただいて来ました。(ドヤァ)」
エドガー
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