【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第2節】ベルカ地上にて。フランツとの会話。
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?」
すると、ヴィクトーリアは、自分たち三人の他には周囲に誰もいないにもかかわらず、少し声を落としてこう答えました。
「実は……これは、まだ当分は内緒にしておいていただきたい話なのですが……准将の率いる第二次調査隊の艦は、すでに〈本局〉を出航しており、今はもうこの世界の上空にまで来ています。そこで、『准将は所用で少しだけ第八地区に上陸する必要があるから、その間、艦はしばらく中央大陸の上空に停泊する』と聞かされたので、私たちは『准将の御用件ほど時間はかかりませんから』と無理を言って、少しだけ上陸許可をいただいて来たのです」
「私たちは最初からこちらに立ち寄らせていただくつもりで、『もし行きに許可が下りなくても、帰りには何とか』と思い、あらかじめ新茶を携えて乗艦していたのですが……早めにこちらへお届けすることができて幸いでした」
「それでは、あまりゆっくりとはできないのかね? どうせなら、今ここでコニィに新茶を淹れてもらって、一緒にしばらく寛ごうかと思っていたのだが……」
「申し訳ありません。『2刻ほどで切り上げるように』と言われています」
「それでは、仕方が無いな。局員は任務が優先だ。できれば、新世界からの帰途には、もう少し時間に余裕を持って、またこちらに立ち寄っておくれ」
「はい。許可さえ下りれば、是非そうさせていただきたいと思っております」
そこで、フランツは『さて、立ち話はこれぐらいにして』と二人に席を勧めました。しかし、三人で着席すると、フランツはふと新茶の箱に視線を落とし、いかにも残念そうな表情を浮かべます。
その「いささか小児じみた表情」に、コニィは思わず微笑を浮かべながらも、「お茶を淹れる側の人間」として、フランツにひとつ大切なことを訊きました。
「ところで、博士。この辺りの水はもう普通に飲めるのですか?」
ベルカ世界の大地や水は、もう七百年以上も昔の「第二戦乱期」以来、長らく汚染されたままになっていたはずなのです。
フランツはゆっくりと首を横に振って答えました。
「見てのとおり、空や地上はもうだいぶ良くなって来ているが、地下水はまだダメだよ。大陸全土で、湧き水は今でも人体に有害だ。それでも、『飲み水をすべて〈本局〉から運んで来る』という訳にも行かないから、今は仕方なく雨水を蒸留して飲んでいるのだが……正直な話、純水というのは、あまり美味しい水ではないね」
「本当に美味しくお茶をいただこうと思うと、やはり、多少はガスやミネラルが溶け込んでいる水でないと……」
コニィの指摘に、フランツも大きくうなずきます。
「それで、私はもう十年以上も前から、ずっと経理担当者に『第五地区で暮らす
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