【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第2節】ベルカ地上にて。フランツとの会話。
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じき)に下賜された』という貴重な写本だったようです。】
第五地区の外れには、空輸用の滑走路などとは別個に「人員の転送」専用の場所として、「方形の基壇」が周囲の地面よりも一段だけ高く築かれていました。「おおよそ8メートル四方」の広々とした空間です。
〈スキドブラドニール〉の艦橋オペレーターがこちらに連絡を入れてから、時間はまだ1刻も経ってはいなかったのですが、それでも、フランツ博士(64歳)は急いで自分の作業を切り上げ、その基壇のすぐ脇にまで、姪のヴィクトーリア(33歳)とイトコメイのコニィ(29歳)をわざわざ出迎えに来てくれていました。
外見的には、学者と言うよりも競技選手か何かのような、全く年齢を感じさせない精悍な印象の人物です。
「ああ、伯父様! お忙しい中、わざわざこんな場所にまでお出迎えいただけるとは恐縮です」
ヴィクトーリアもさすがに少し驚いたような声を上げました。やや急ぎ足で壇から降り、両手で恭しく、差し出されたフランツの右手を取ります。
「いや。二人とも、よく来てくれたね。おかげで、この荒れ地にもいきなり大輪の花が咲いたような気分だよ」
フランツも、実に爽やかな笑顔でそう応えました。
コニィも荷物をひとつ、大切そうに両手で捧げ持って主人の後に続き、フランツの前で深く一礼しました。
「博士。長らく御無沙汰しておりました」
「ああ。君たちと直に会うのは……もう丸一年ぶりになるのかな?」
「はい。本日は些少ながら、こちらの新茶をお持ちしました」
「おお、それはありがたい! 今年はどうしても、この時期にミッドまで戻っている時間が取れなくてね。自分でも一体どうしたものかと思っていたところだったんだよ」
フランツは本当に嬉しそうな表情で、コニィの手から「各種の新茶を詰め合わせた箱」を受け取り、すぐ隣に設置されたテーブルの上にその箱を置きました。丸いテーブルの周囲には、オープンカフェのような感じで四脚の椅子が置かれています。
「お喜びいただけて何よりです。そう言えば、前回お会いしたのも、博士がわざわざミッドにまで新茶を取りにいらした時のことでしたね」
「ああ。そう言えば、昨年はそうだったかな」
フランツはコニィの指摘に笑顔でそう応えてから、一拍おいてふと真顔に戻り、ヴィクトーリアにこう問いかけました。
「ところで、ヴィクター。私はつい先日、『新世界への第二次調査隊に同行する執務官として、他でもない君があの〈生きた伝説〉から直々に指名された』という話を聞いたばかりだったんだが、そちらの日程にはまだ余裕があるのかね
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