【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第6章】ベルカ世界より、いよいよ新世界へ。
【第1節】艦内生活、二日目の朝の様子。
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そして、一夜が明けて、新暦95年の5月8日、早朝の5時半頃のことです。
ツバサは眠そうに片目だけを開けて時計の時刻を確認すると、『もう2刻ぐらいは、いいかな』と思って、再び目を閉ざしました。
しかし、少しだけ目を覚ましたことを、気配で覚られたのでしょうか。そこへすかさず、カナタから念話が届きました。何やら本気で助けを求めているかのような「いささか切羽詰まった感じ」の口調です。
《ねえ、ツバサ。起きてヨ! どうして、ボク、こっち側で寝てるの? さっきから、何だか「貞操の危機」を感じるんだけど!》
ツバサが軽く身を起こして向かいの二段ベッドの下の段を(暗視の魔法を使って)覗いてみると、暗がりの中でもカナタとしっかり視線が合いました。
カナタは背後からノーラに抱き抱えられており、一体どれだけ寝相が悪ければそうなるのか、二人の体はまとめて一枚のタオルケットに包まれてしまっています。これでは、ろくに身動きが取れないのも無理は無いでしょう。
それでも、ツバサはいかにも面倒くさそうな口調で、冷静にこう返しました。
《大丈夫ですよ、カナタ。ノーラさんはまだ寝ていますし、女性同士なんですから、貞操の危機なんて何処にもありません。》
《いや。でも! 今もパジャマ越しにお腹をワサワサされてるし、首筋の辺りもクンカクンカされてるし。ノーラさん、いかにも幸せそうに何かブツブツ言い続けてるんだけど! これって、ホントに寝てるの?》
ツバサはひとつ大きく息を吐くと、仕方なく室内管理AIに音声で命令し、部屋の照明をつけさせました。
「ノーラさん。起きてください、ノーラさん」
ツバサはそう呼びかけたのですが、ベッドは上の段の方が照明器具に近くて明るいからでしょうか、ゼルフィの方が先に目を覚ましてしまいます。
「ええ? 何? ……まだ5時半じゃん。どうしたの? ツバサ」
「ああ、起こしてしまってすみません。ちょっと、ノーラさんが……」
「んん?」
ゼルフィは眩しげに目を細めながらも、ベッドの外側へ軽く身を乗り出して下の段を覗き込みました。すると、ちょうどそのタイミングで、ノーラがまた本当に幸せそうに、かなり明瞭な口調で寝言を言います。
「ふふ〜ん。ダメだよ、バールゥ。(笑)」
ゼルフィは『あちゃ〜!』と言わんばかりに溜め息をつくと、今度は少し大きな声を上げました。
「こら! 起きろ、ノーラ! その子は、バールゥじゃないぞ!」
「え〜、何言ってるの〜? この子は、バールゥだよ〜。(スリスリ)」
「ちょっ! ノーラさん。何か、眠ったままで受け答えしてるんだけど!」
カナタの方は、もう半ば悲鳴のような口調です。
ゼルフィ
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