第百四十七話 文化祭開催その五
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「それでそんな作品であんたが言う」
「黒人の体臭ね」
「そのこと書いていてもね」
「気にしないことね」
「おかしくなった人の言うことはね」
それはというと。
「気にしたら負けだし」
「書いていることも」
「そう、負けでしょ」
気にすればというのだ。
「本当におかしくなっているならね」
「そんな人の言うこと聞いても」
「意味ないでしょ」
「そうね、まともな人ならね」
それならというのだった。
「言うことも聞くけれど」
「まともでないなら」
「もうね」
ケニアの娘も答えた。
「聞いてもね」
「仕方ないわね」
「だからね」
それでというのだ。
「気にしないことよ」
「黒人の体臭とか書いていても」
「あんた匂わないわよ」
富美子ははっきりと言った。
「何もね」
「そうなの」
「ええ、全くね」
「無臭なのね」
「そうよ」
実際にというのだ。
「あんたはね」
「だったらいいけれど」
「ええ、というか芥川ってね」
あらためてこの作家の話をした。
「相当風呂嫌いだったらしいから」
「じゃあ匂うとすれば」
「むしろね」
「芥川の方ね」
「そうだったと思うわ」
「あの人風呂嫌いだったの」
「そうみたいよ」
ケニアの娘にこのことを話した。
「本当にね」
「そうなのね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「あの人イケメンよね」
「ああ、確かにね」
ケニアの娘もその通りと頷いた。
「アジア系のイケメンよね」
「そうでしょ」
「それもかなりの」
「だからもてたそうよ」
「そりゃもてるわね」
富美子の話に当然と頷いた。
「あの人は」
「東大出てたしね」
「それでイケメンだから」
だからだというのだ。
「もてたのよ」
「そうなのね」
「太宰もね」
太宰治、彼もというのだ。
「イケメンだったから」
「あの人もそうね」
「もてたのよ」
「だから心中したのね」
「最後ね」
「そうなのね」
「太宰は芥川を尊敬してたけれど」
それも終生であった。
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