第一章
[2]次話
猛虎の監督
川藤幸三を見てだ、大阪の若いサラリーマン呉義直背が高くすらりとしていて穏やかな顔立ちで黒髪を左で分けている彼は言った。
「この人監督したことないですね」
「コーチはあったな」
甲子園の一塁側でその川藤を見てだ、会社の上司で同じ阪神ファンとして意気投合している川勝大海はすぐに答えた。眼鏡をかけて面長で色黒で縮れた黒髪の中背で痩せた中年男だ。二人は仕事でもプライベートでもバッテリーの様である。
「けれどな」
「監督はないですね」
「監督は特別だからな」
川勝は呉に言った。
「本当に」
「やっぱりそうですね」
「どのチームでもな」
「コーチはなれても」
「コーチは何人もいるからな、フロントに行くのもな」
そちらの道もというのだ。
「あるしな」
「そうですね」
「そしてな」
それでというのだ。
「阪神の監督になると」
「皆注目しますね」
「一挙手一投足がな」
そういったものがというのだ。
「もうな」
「注目されて」
「ディリーにも毎日出るしな」
「シーズンオフでもですね」
「そうなるからな」
「阪神の監督はな」
「特別ですね」
呉も言った。
「本当に」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「阪神の監督になれる人はな」
「限られますね」
「どのチームもだけどな」
川勝はこうも言った。
「コーチやフロントの人は多くても」
「監督は一人」
「だからな」
それでというのだ。
「どのチームでもな」
「監督はまた特別ですね」
「とんでもない仕事だけれどな」
「寝られない位ですね」
「ストレスでな」
「勝たないといけない、育てないといけない」
呉はグラウンドを観つつ言った。
「そのプレッシャーですね」
「秋山さんなんてな」
「秋山さん?」
「ホークスの監督だったな」
「ああ、秋山幸二さん」
阪神ファンの彼は名前を聞いてもすぐにはわからなかったがホークスと聞いてそれでわかったのだった。
「二〇一四年日本一になった」
「阪神に勝ってな」
「阪神守備妨害で負けて」
それでソフトバンクの日本一が決定したのだ。
「和田監督が抗議している横で胴上げした」
「あの人は」
「あれはなかったですね」
呉は憮然となって述べた。
「抗議する映像でホークス日本一って出たんで」
「あんなことないからな」
「普通ないですよね」
「守備妨害で負けること自体な」
そももそというのだ。
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