遭遇する姉
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その声が異様に低くなるのを聞き取るやいなや、あたしは飛び出した。幸運にも、石飴をたっぷり浴びていたおかげで、おじさんの手がするりと滑りあたしを捕まえることが出来ない。
ごっ、ごめんなさーい!
後ろから聞こえる怒鳴り声を背に、あたしはするすると人混みを駆け抜けた。ヒエラルキー最下層の人間が逆さになってもあれだけの石飴の弁償代なんて、出てくるわけがない。
大分離れてから、あたしはやっと息をついた。
酷い目にあった…おばさんに桃を売っているところを聞いただけなのに…いきなり薙ぎ払われて、べとべとになって、石飴の、べん、弁償…。
むむむむ、無理!あんな高いの、無理!あたしは庶民中の庶民です!
とっとと桃買って、とっととノエルのところに戻ろう…。
あたしは声をかけやすそうなおばさんを見つけて、片手を挙げた。
「おば…」
いや待つのよサラ。よく確認するのよ。右よし、左よし、上よし、下よし。馬も棒持った男もいないわね。
「なにしてんのあんた」
「いえ、今後のおしりの安全ために」
きょろきょろしているとおばさんのほうから呆れたように声をかけてくれた。
「あんた、女の子かね。だったらおしりは大事だがね、そんなにそこここでおしりを狙われているのかね」
「いえあたしのおしりにそこまでの価値はないんだけど…それより、そんなにあたし女の子に見えるかなぁ」
擦り切れた土色の服をつまむ。男兄弟のものだから、そんなに女だってばれないと思っていたんだけどな。ちょっと前まで全然バレなかったんだけれど。
「格好は…男の子に見えないこともないけれど、声がねぇ」
「声…かぁ。うーん低い声で話さなきゃかなぁ。…あれ、おばさんもう店じまいなの?まだ閉まるには早い時間だけれども」
おばさんはほくほくとした顔で、歯の抜けた笑顔を見せてくれた。
「それがねぇ、今日は元々結構売れた日なんだけど、極めつけはたった今さっきうちの商品を買い占めてくれたダンナがいたからさ。生ものだから、売れ残ると困ってしまうしね」
「そうなの、よかったわねぇ。何を売っていたの?」
「桃だよ」
「桃!?」
あたしはぐぐいとおばさんに詰め寄った。
「なんだね、近いよ」
「おばさん、あたしも桃を探しているんです!ここらへんでほかに桃を売っている店は!?」
「あぁそうだったのかい。だけど悪いねぇ、ここらへんではうちの店以外に桃を扱っているところは
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