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金木犀の許嫁
第三十九話 めでたい幽霊がその十四

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「やっぱりです」
「普通のもんやな」
「そうです」
 まさにというのだ。
「妖術でもなくて」
「仙人さんでもないな」
「違います」
「そやな」
「現実的です」
「荒唐無稽やないな」
「それで織田作さんもですか」
「荒唐無稽に書いてたわ」
 織田自身が認めることだった。
「自分等のご先祖さんもニコ狆先生もな」
「荒唐無稽でしたね」
「姿を消すなんてな」
 ニコ狆先生のその術の話もした。
「ないやろ」
「はい、本来の忍術では」 
 佐京は即座に答えた。
「ないです、隠れはしますが」
「姿は消さんな」
「煙玉を使っても」 
 忍者が用いる道具の代表のものの一つのそれをというのだ。
「煙が出ている間にです」
「煙幕でやな」
「逃れるというもので」
「姿を消すんやないな」
「五遁の術もです」 
 水遁、火遁、土遁、木遁、金遁とある。五行思想に基づくものであり忍者はこの術を修行で身に着けるのだ。
「相手を驚かせたり隠れたり」
「目晦ましををしてな」
「逃げたりします」
「そうした術やな」
「攻撃にも使わず」
 本来はというのだ。
「それで姿を消すこともです」
「ないな」
「透明になることも」 
 それもというのだ。
「ありません」
「そや、けどな」
「昔はですね」
「荒唐無稽にな」
「書いてましたね」
「漫画でもそやったな、そこはな」 
 織田は笑って話した。
「物語やから面白くでな」
「そうしたものを書いてもですね」
「普通にな」
 それこそというのだ。
「許されていたからや」
「書いていましたね」
「私もな」
「そうだったんですね」
「そや、昭和のあの頃はな」
「そういうことですね」
「そや、それでな」
 織田は佐京それに夜空にさらに話していった、幽霊である彼は闊達な調子で自分が描いた作品の主人公の子孫達に話していった。


第三十九話   完


                  2024・8・23
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