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シェリー誕生
第二章

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「この酒飲むか」
「ああ、忘れてたな」
「もう何年も置いてたな」
「折角だし飲むか」
「酒は何年も置けるしな」
 仲間達もそれならとなってだった。
 その樽を開けた、すると。
「色が違うな」
「透明じゃないな」
「琥珀色だぞ」
「それに香りも違う」
「芳醇な感じだ」
「随分変わったな」 
 業者達はそのウイスキーを見て目を瞠った。
「違う酒みたいだ」
「シェリーの樽に何年も入れるとこうなるんだな」
「色も香りも変わるか」
「じゃあ匂いはどうなる」
「そちらはどうだ」
 こう話して飲んでいるとだった。
「また違うな」
「深い味だな」
「角が取れた感じだ」
「かなり美味いぞ」
「これはいけるぞ」
 業者達は笑顔で飲んだ、そしてだった。
 密かに売りだした、密造したそれは陰から飛ぶ様に売れた。そこからシェリーの樽のウイスキーは定着したのだった。
 二十世紀の日本で宰相を務めている吉田茂はそのウイスキーを飲みつつ和服姿で自身の家に来た客にこの話をしてだった。
 そしてだ、客に笑顔で話した。
「それでこの酒がなんだが」
「シェリーのウイスキーですか」
「どうかね」
 客にもそのウイスキーを振る舞いつつ尋ねた。
「味は」
「成程、ウイスキーはこれまでも飲んできましたが」
 客は一口飲んでから答えた。
「確かにです」
「美味いね」
「他のウイスキーと違います」
「そのウイスキーが生まれるまでにだよ」
「そうした歴史があったのですね」
「全てはあれだよ」
 吉田はウイスキーが入ったグラス片手に悠然と座って話した。
「イングランド王が税金をかけた」
「スコットランドのウイスキーに」
「とんでもないだけかけたからね」  
 その税金をというのだ。
「生まれたのだよ」
「お話の通りに」
「皮肉だね」
 吉田は笑ってこうも言った。
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