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カスパール=ハウザー
第二章

[8]前話
「しかしだ」
「何度調べてもですね」
「関りはないと出た」
「大公家とは」
「それであの話が真実でないとわかった」
「大公家のご落胤でずっと何処かに監禁されていた」
「彼が言ったそれはな」
 まさにというのだ。
「嘘とわかった」
「そうですか」
「そのことはわかった、だが」 
 ここでだ、ランドルフは顔を顰めさせて言った。
「わかったのはそれだけだ」
「大公家と関りがないということが」
「彼はいきなり出て来た」
 このことを言うのだった。
「まさに煙の如くだ」
「ニュルンベルグに出てきましたね」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「常識が全くなくな」
「五感が異常に発達していて」
「何者かに殺された」
「何処で暮らしていたか謎ですね」
「結局彼が何者だったか」
 このことはというのだ。
「今もだ」
「わかっていないですね」
「そうだ、結局だ」
「大公家と関係がないことがわかっただけですね」
「それだけだ」
 博物館に行く途中でケストナーに話した、そしてだった。
 博物館に着いて二人で彼の肖像画、異様に頭が大きく童顔で歪脚のそれを観てだ、ランドルフはケストナーにあらためて話した。
「同じ年頃の少年にしては頭が大きくな」
「等身が妙ですね」
「タッチから正確に描いたと思われるが」
 肖像画は実に写実的である。
「しかしな」
「この様な頭が大きいのは」
「やはりだ」
 どう見てもというのだ。
「妙だ」
「そう言っていいですね」
「このことも妙だ、結局今も彼が何者かはだ」
「わからずじまいですね」
「謎は今も明かされていない」
 カスパール=ハウザーのそれはというのだ。
「彼を殺したのが誰かもな」
「わかっていないですね」
「大公家の人でないとわかってもな」
「何者かはわかっていないままですね」
「果たしてそれがわかる日が来るか」
「それもわからないですね」
「そうだ、全く以て謎だ」
 今も尚というのだ。
「これ程謎の人物はだ」
「そうはいませんね」
「例えバーデン大公家と関りがなくともな」
「謎は謎のままですね」
「これからもな」
 こう話してだった。
 二人で博物館の中を観て回った、そこにあるものは謎そのものだった。何かと書かれているが結局彼が何者かは全くわかっていないままだった。全てがそうであった。


カスパール=ハウザー   完


                  2024・9・11
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