第一章
[2]次話
ウイスケ
竹鶴政孝はイギリスでウイスキー製造を学び日本に戻った、そして一九二三年に京都の山崎に日本発のウイスキー^の蒸留所を建てた。そしてイギリスで結婚した妻のリタに話した。
「あと数年経てば」
「日本でもなのね」
「ウイスキーが飲める様になるよ」
「それはいいことね」
「ここは水がいいんだ」
竹鶴は妻にこのことを強く言った、二人共確かな顔である。
「だからね」
「お水がいいなら」
「いいお酒が出来るよ」
「そうね、むしろ日本の方がお水はいいから」
妻は夫にイギリス生まれであることから話した。
「だからね」
「日本の方がいいウイスキーが出来るんだね」
「きっとね」
「ここはあの千利休が茶室を構えた場所でもある」
茶道を確立した彼がというのだ。
「それだけにお水がいい」
「わざわざ選んで茶室を置いたのね」
「そうなんだ、だからきっといいウイスキーが出来る」
竹鶴は確信を以て言った、そしてだった。
実際にウイスキーを造りはじめた、見事な工場に大量の大麦を運び込み造りだした、竹鶴はその状況を観て言った。
「造って何年か寝かせる、そうすれば」
「その時にですね」
「美味いウイスキーが出来ますね」
「そうなりますね」
「絶対にね」
竹鶴は工場で働いている者達に言った、そうしてだった。
実際に造ったウイスキーを何年も寝かせた、だが大麦が大量に山の中にあるハイカラな工場に運ばれ品が出て来ずだ。
地元の者達は不思議に思った、それで口々に話した。
「おかしいな」
「そうだな」
「物凄い量の麦をハイカラな工場に運び込んで」
「天王山にあるあそこにな」
「何を造っているんだ」
「あれだけの麦で何を造っているんだ」
「それで何で造ったものが出て来ないんだ」
こうした意見も出た。
「一体な」
「というか造っているのか?」
ここでこんな言葉が出た。
「そもそも」
「どういうことだ?」
「造っているのかって」
「一体な」
「どういうことなんだ?」
「若しかして造っていなくてな」
工場でというのだ。
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