第二章
[8]前話
「左様です」
「そうか、じゃあ仕方ないな」
「そのビールを分け合うか」
「そして飲むか」
「そうするか」
「少しでも喉を潤したいしな」
「そうしよう」
眉を曇らせて話してだった。
実際に席に着いてそのビールを分け合って飲みはじめたが。
「おかしいな」
「そうだな」
「ビールが減らないぞ」
「幾ら飲んでもな」
「ビールは少ししかないのに」
「どういうことだ」
「まさか」
ある者がここではっとなって仲間達に言った。
「アルノール様が奇蹟を起こされたか」
「わし等にビールを下さっているのか」
「ご自身をメッツまで運ばれている我等に」
「喉を潤して下さっているのか」
「何と有り難いことだ」
メッツの者達はそうだと察して言った。
「アルノール様のお心だ」
「アルノール様はとてもお優しい方だったが」
「お亡くなりになってもか」
「わし等にこうしたことをして下さるか」
「それならだ」
メッツの者達はビールを飲みつつ話した。
「ここは飲ませてもらう」
「このビールをな」
「そして喉を潤して」
「あらためてだ」
「アルノール様をメッツまで送らせてもらおう」
「そして眠ってもらおう」
「わし等の街で」
こう話してだった。
彼等はビールで喉を潤した、そしてだった。
飲んだ後でアルノールの遺体をメッツまで送った、そして弔い眠ってもらったがその話を聞いてだった。
メッツにいた修道士の一人は神父に言った。
「まさに奇蹟であり」
「書き留めてですね」
「はい」
そのうえでというのだ。
「伝えましょう」
「後世に」
「そうしてです」
修道士はさらに話した。
「アルノール様を聖人にして下さる様」
「教皇にお話すべきですね」
「ビールの」
「このことからですね」
「守護聖人にしてはどうかと」
その様にというのだ。
「お話しましょう」
「そうですね、では」
「教皇様にです」
「そうしましょう」
二人は頷き合ってだった。
アルノールは聖人それもビールのそれに列せられた、そしてだった。
多くのキリスト教徒達が今も彼のことを思いつつビールを飲んでいる。まだ欧州それにキリスト教が今の形になろうとしている頃の話である。一人でも多くの人が読んで頂ければこれ以上の幸せはない。
アルノールのビール 完
2024・9・14
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