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アルノールのビール
第一章

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                アルノールのビール
 メロヴィング朝は内紛が絶えない家であった、その為この王朝に仕えていたアルノールは決意した。
「官吏を辞めます」
「それで、ですか」
「はい、これよりです」
 キリスト教の司教に話した、穏やかな顔をした茶色の髪と目の男だ。
「神の道に入ります」
「メロヴィング家は争いが絶えません」
 司教もこのことを言った。
「それではです」
「仕えてもですね」
「苦しいですね」
「まことに」
「あの様な苦しみを避け」 
 そうしてというのだ。
「神の道に入ることもです」
「よしですね」
「はい、ではこれより」
「神の道に入ります」
 こう言って剃髪を受けてだった。
 アルノールは神の道に入った、そうしてだった。
 彼は信仰を持ち神の教えを学んでいった、やがてメッツの司教になった。それからは引退してであった。
 別の街に退きそこで亡くなったが。 
 彼は非常に徳と信仰、そして学識のある人物であったのでメッツの者達に心から慕われていた、それでだった。
 メッツの者達は彼が亡くなったと知りこう言った。
「是非メッツで弔いたい」
「そしてこの街で眠ってもらいたい」
「メッツの街の為に尽くしてくれた」
「わし等をいつも導いてくれた」
「そうした方だからな」
「そうしたい」
 こう言ってだった。
 その街の者達と話して遺体を引き取ることになった、それで早速だった。
 メッツの者達はその街に行って遺体を引き取りメッツまで棺に入れたうえで運んでいった。その途中だった。
「喉が渇いたな」
「そうだな」
「少し休むか」
「居酒屋にでも入りな」
「何か飲もう」
 口々に言ってだった。
 彼等は通りがかりの居酒屋に入った、だが。
「もう殆ど売れて」
「杯一杯だけか」
「それだけのビールしかないのか」
「他の酒は全部売れて」
「ビールだけが残ってか」
「はい」
 店の者はメッツの者達に困った顔で話した。
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