第三章
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「正義とはね」
「言えなかったですね」
「しかも負けたわ」
「引き分けでもなく」
「アメリカははじめてね、これまでアメリカは正義で」
そうであってというのだ。
「常に勝っていたのに」
「間違っていて敗れた」
「そうした戦争だったわ、あの戦争があって」
そうしてというのだ。
「アメリカでああした犯罪が増えたわね」
「そして湾岸戦争で収まりましたね」
「去年ある心理学者の人が言っていたのを聞いたわ」
キングストンは真面目な顔で話した。
「アノミー、価値観ね」
「私も聞いたことがありますが」
「そのアノミーが崩壊した社会ではね」
「あの頃のアメリカの様な状況に陥りますか」
「アメリカは常に正義で勝つ」
「それが間違っていて敗れた」
「まさに価値観が崩壊したわ」
ベトナム戦争でというのだ。
「そしてアメリカ全体が揺らいで迷っていたから」
「それまでの価値観が崩壊して」
「そしてね」
その結果というのだ。
「あの頃はああした犯罪が多かったのよ」
「そうでしたか」
「けれど湾岸戦争では正義で勝ったわ」
「アメリカは」
「だからね」
「価値観が復活しましたね」
「そうなったからね」
だからだというのだ。
「ああした犯罪が減ったのよ」
「そういうことですか」
「価値観はね」
これはというのだ。
「人には必要よ、社会にもね」
「必要ですね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「それが崩壊したらあの頃の様になって」
「存在するか戻ればですね」
「今の様になるのよ、犯罪もね」
「それに影響されますね」
「そうよ、だからまた価値観が崩壊すれば」
キングストンはその目を鋭くさせて語った。
「あの頃みたいになるわ」
「アメリカが」
「そうなるわ、どの国でも組織でも世界もね」
こう言うのだった、そしてその後はそれぞれの家庭の話をした。その家庭にも二人は価値観を見出して語ったのだった。よい家庭を持っていると犯罪を犯さない傾向が強いと。
アノミー 完
2024・6・14
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