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アノミー
第一章

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                アノミー
 この頃のアメリカは何かと凶悪犯罪が多かった、そうした事件を担当しているFBIのマリー=キングストンアフリカ系の若い女性である彼女は苦い顔で言った。
「起こって欲しくない事件ばかり起こるわね」
「そうですね」
 部下のフランシス=ブラウンが応えた、金髪をセットしている青い目と面長の顔を持つ長身の男だ。年齢はキングストンより二歳若い二十四歳だ。
「何かと」
「何かね」
 キングストンは自信の机から言った。
「調べたら七十年辺りからね」
「こうした事件が増えてきていますか」
「ええ」
 こうブラウンに話した。
「これがね」
「七十年ですか」
「その頃は公民権運動があったけれど」
「そっちの問題じゃないですね」
「戦争ね」
「ベトナムでの」
「反戦運動が凄かったわね」
「ええ、何かと」
 ブラウンはまさにと答えた。
「そうでしたね」
「あの戦争についてね」
「覚えています」
「私達は子供だったけれどね」
「何かと揉めていましたね」
「アメリカ中がね」
「アメリカは間違っている」
 ブラウンは考える顔で話した。
「多くの人が言って」
「それに反発する人もいてね」
「揉めに揉めていましたね」
「ヒッピーが出てね」
「銃の代わりにお花と言って」
「麻薬も流行って」
 そうしてというのだ。
「これまでアメリカの戦争は正義だったのが」
「間違いと言われましたね」
「あの戦争が起こって」
 キングストンもあの頃のことを思い出しつつ話した。
「暫くしてそうした運動が起こって」
「それからですか」
「顕著になったのは終わってからよ」
「アメリカでおかしな犯罪が増えましたか」
「前から我が国は銃があるから」
 銃社会だからだというのだ。
「それに基づく犯罪はあったけれど」
「今はですね」
「それを差し引いてもね」
「おかしな事件が多いですね」
「異常な猟奇連続殺人が」
 それがというのだ。
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